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高騰する銅・ニッケル・アルミ市場、脱炭素にウクライナ問題の影響は【後編】製造マネジメントニュース(3/3 ページ)

A1Aは2022年5月26日、銅、ニッケル、アルミニウムといった主要非鉄金属の最新市場トレンドを解説するセミナーを開催した。ロシアによるウクライナ侵攻やカーボンニュートラルの動向、新型コロナウイルス感染症が市場に与える影響を解説した。本稿では後編としてアルミニウムの市場動向と、カーボンニュートラルが主要非鉄金属市場に与える影響を紹介する。

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展伸材のリサイクル推進がポイントに

 もう1つの対策が、リサイクル材の積極的な活用だ。スクラップ原料を用いたアルミニウムの再生地金はCO2排出量が1トン当たり約0.309トンであり、新地金を生産する場合と比較して約30分の1程度に抑えられる計算である。日本国内ではグリーンアルミニウムよりもリサイクル材の活用に注目する向きもあり、「実際に2019年の国内アルミニウム生産の約48%はリサイクル材を活用したものだった」(遊佐氏)という。

 リサイクル材活用が進むのは、異金属混入への許容度が高い鋳造材、ダイカスト品が主である。一方で、展伸材ではあまり活用が進んでいない。このため、展伸材が鋳造材にリサイクルされるカスケードリサイクルが生じており、これをいかに崩すかが今後の課題である。

 解決に向けた考え方として挙げられるのが、生産時に発生した廃棄物や自社の使用済み製品を同等品質の材料として再生するクローズドループ・リサイクルだ。自動車メーカーや飲料缶、サッシ、印刷版などで導入例がある。


リサイクル材活用が進む[クリックして拡大] 出所:A1A、鉄鋼新聞社

 海外の大手アルミニウム圧延メーカーもリサイクル材活用に向けた大規模投資を実施している。今後同手法は加速すると見込まれるが、同時に、リサイクル材の確保が過熱する可能性もある。特に、日本国内のリサイクル材は不純物が少ないとされており、海外メーカーからの調達需要が高まる可能性もある。

脱炭素加速が自動車向け銅需要も後押し

 社会全体でカーボンニュートラルに向けた取り組みが進展しているが、こうした動向は銅需要の押し上げ要因になるとみられている。特に自動車用途での需要が増える見通しだ。

 もともと銅は、ワイヤハーネス、駆動用モーター、電池用銅箔、車載カメラ、ECU(Electronic Control Unit)のパワー半導体、ギアボックス、ミリ波レーザーレーダー、ディスプレイなど、多くの自動車用部品に用いられている。ここれに加えて今後は、EV(電気自動車)需要の拡大が銅需要をさらに高めると予想される。


銅が使われている代表的な自動車向け部品[クリックして拡大] 出所:A1A、鉄鋼新聞社

 相楽氏は「もともと自動車の銅使用量は年々増加していたが、今後はCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)への対応やレーダー、カメラなどの搭載数増加で銅需要は拡大するだろう」と指摘する。国際銅協会(ICA)では、現在の内燃機関車が自動車1台当たり約30kgの銅を使用するのに対して、2040年時点での電動化/自動化されたEVでは約73kg必要になるという試算を公開している。

 一方で相楽氏は、中長期的に見た際に、「銅需要への影響要因としては(自動車分野よりも)、エネルギー関連分野が大きい可能性がある」とも説明した。陸上風力発電、洋上風力発電、太陽光発電の発電設備で多く使われるためだ。

「Copper Mark」の普及も進む

 銅製造プロセスにおけるGHG排出削減など、「責任ある生産/調達」の取り組みも増加している。銅鉱山の操業電源に再生可能エネルギーを取り入れる他、精錬所でのCO2マテリアルフローの把握やライフサイクルアセスメントを進める動きもある。相楽氏は「価格面で多少のプレミアムがあっても、よりクリーンな製品の方が選ばれる世の中になるのではないか。どれだけクリーンな製品かを競う動きも企業間で出るかもしれない」と指摘した。

 また銅市場では、カーボンニュートラルを含め製品のバリューチェーンやライフサイクル全体で「責任ある生産」やSDGsへの貢献を示す取り組みを実施していることを示す「Copper Mark」の普及も進んでいる。「同様の動きは他の非鉄金属にも広がると予想されている」(相楽氏)という。

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