高騰する銅・ニッケル・アルミ市場、脱炭素にウクライナ問題の影響は【後編】:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
A1Aは2022年5月26日、銅、ニッケル、アルミニウムといった主要非鉄金属の最新市場トレンドを解説するセミナーを開催した。ロシアによるウクライナ侵攻やカーボンニュートラルの動向、新型コロナウイルス感染症が市場に与える影響を解説した。本稿では後編としてアルミニウムの市場動向と、カーボンニュートラルが主要非鉄金属市場に与える影響を紹介する。
副原料や輸送燃料コスト転嫁の動き広まる
アルミニウム市場では現在、加工賃改定の動きが相次いで出ている。板製品や銅管に続き、最近では黄銅棒においてもこうした流れが生まれているという。背景には原燃料費や人件費の高騰に加えて、カーボンニュートラル実現に向けた各種取り組みのコストを転嫁する動きがある。
また、アルミニウム合金については、副原料の市場価格と連動させるフォーミュラ制を導入する動きもあるという。副原料であるマグネシウムやシリコン、金属マンガンなどは、これらの主要生産国である中国で2021年に電力制限が行われた際、完全に生産がストップしたため、一時価格が暴騰した。調達懸念が解消された2022年現在も、昨春比では価格高止まりが継続している。このため、アルミニウム圧延メーカーの間ではフォーミュラ制の導入が広がっている。なお、遊佐氏は「二次合金メーカーではこうした動きは見られない。これらのメーカーで使用量が多いシリコンについては、二次合金のユーザー企業と適宜調整を行っているためだ」と語った。
また、アルミニウム圧延メーカーでは、原油や液化天然ガス(LNG)の燃料コスト増加を加工賃に転嫁するため、原燃料サーチャージ制を導入する動きもある。海上輸送賃の上昇分を製品販売価格に上乗せする価格体系の取り入れを検討するメーカーもいるという。
欧米メーカーはグリーンアルミニウム製品拡充
カーボンニュートラル達成に向けた取り組みは金属業界でも広がっている。この中でアルミニウムは生産過程において、非鉄金属の中でも特に大量の電力を消費する点が課題視されている。例えば、銅1トンを精錬するのには400kWhの電力が必要だが、アルミニウム1トンは1万4000〜5000kWhも消費する。アルミニウムの新地金は1トン当たり、約9.24トンのCO2を排出すると見積もられている。
これに対してアルミニウム業界では主に2つの対策を講じている。1つは水力や太陽光発電など再生可能エネルギーで製造したグリーンアルミニウムの普及だ。規制の動きが強まる石炭火力による電力で製造した場合と比較すると、水力発電による電力使用時はCO2排出量が3分の1以下に抑えられるという。
このため、現在、欧米のアルミニウム精錬メーカーは、水力発電による電力を活用したグリーンアルミニウムのラインアップを拡充している。BMWやAppleなど、グリーンアルミを自社製品に採用するメーカーの事例も増えつつある。さらに、今後は中国もグリーンアルミニウム生産に注力していく可能性がある。現時点で同国のアルミニウム精錬メーカーは、石炭火力発電による電力をメインに活用しているが、「国全体で環境負荷が大きい旧式設備を廃止する方向で進めている上、山東省から水力発電が盛んな雲南省へと工場を移転する動きも見られる」(遊佐氏)という。
一方で、日本国内ではグリーンアルミニウムの製造主体が存在しない。ただ、丸紅などの商社や海外精錬大手の日本拠点がグリーンアルミニウムの取り扱いを開始しており、今後商品ラインアップを拡充していくことが予想される。ただ、供給量の絶対量が少ないため、需要過多になる可能性もある。
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