高騰する銅・ニッケル・アルミ市場、脱炭素にウクライナ問題の影響は【後編】:製造マネジメントニュース(1/3 ページ)
A1Aは2022年5月26日、銅、ニッケル、アルミニウムといった主要非鉄金属の最新市場トレンドを解説するセミナーを開催した。ロシアによるウクライナ侵攻やカーボンニュートラルの動向、新型コロナウイルス感染症が市場に与える影響を解説した。本稿では後編としてアルミニウムの市場動向と、カーボンニュートラルが主要非鉄金属市場に与える影響を紹介する。
クラウド型見積もり管理システムを展開するA1Aは2022年5月26日、銅、ニッケル、アルミニウムといった主要非鉄金属の最新市場トレンドを解説するセミナーを開催した。セミナーでは鉄鋼新聞社 非鉄金属部記者 銅・ニッケル担当の相楽孝一氏と鉄鋼新聞社 非鉄金属部記者 アルミ担当の遊佐鉄平氏が登壇し、ロシアによるウクライナ侵攻やカーボンニュートラルの動向、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が市場に与える影響を解説した。
前編では、主要非鉄金属の市場全体のトレンドと銅、ニッケルの市場動向を紹介した。後編である本稿は、アルミニウムの市場動向に加えて、カーボンニュートラルの進展に伴う主要非鉄金属市場の動向を取り上げる。
※本稿に記載した内容、また、掲載資料は全て、2022年5月25日時点での情報を基に作成したものである。
ロシア産の地金減産は控えめか
アルミニウム市場は、2020年の初めまでは米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で低調だったが、その後市況が反転して、同年秋ごろにはコロナ禍前の水準に回復した。2021年の後半からはエネルギー価格の高騰や中国の電力供給制限に伴い2000ドル台後半まで値上がりした。温室効果ガス(GHG)の削減策として、製造時のエネルギー源が石炭から天然ガスにシフトしており、それによるアルミニウム製品への価格転嫁なども値上がりの要因となった。
2022年に入ると、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、アルミニウムの価格は一時4000ドル近くの水準に切り上げた。しかし、遊佐氏は「オーストラリアがロシア向けのアルミナを輸出しないという禁輸措置を実行したものの、中国が輸出を代替したため、ロシア産地金はあまり減産していない」と指摘した。今後、ウクライナ侵攻による世界経済の減速懸念や、中国のロックダウン政策に伴う同国景気への影響などが、アルミニウムの価格下落要因になり得る。一方、上昇要因としては、エネルギー価格の高止まりによる生産コストが増加していることや、中国のアルミニウム生産能力が上限に近づいていることなどが挙げられる。
アルミニウムの需要は中長期的には増加傾向にある。2020年時点で世界全体のアルミニウム需要約1億トンの内、半分を占めるとされる中国では、2024年までにアルミニウムを300万トン増産する計画だが、国内のみで需給バランスがとれるだろうと予想されている。同国の需要ピークは2030年ごろと見込まれている。
ただし、現在足元で自動車や電池、建設などの用途で需要が増えていることを勘案すると「需要規模自体は2030年以降も増加する可能性もある」(遊佐氏)という。加えて、米国や欧州では飲料缶などの用途で需要が増えており、アルミニウムの需給は世界的にタイトなものとなる可能性がある。
2030年以降の需要けん引役はインドネシアやインド、アフリカなどになるとみられる。なお、日本国内の需要は、2050年までに2017年比で43%増の577万トンになると見込まれている。
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