パナソニックの“現場最適化”が体験可能に、顧客接点の拠点を刷新:サプライチェーン改革(3/3 ページ)
パナソニック コネクトは、B2Bの顧客との接点となるハブ機能として東京・浜離宮の本社内に2019年1月にオープンした「カスタマーエクスペリエンスセンター(CXC)」をリニューアルし報道陣に公開した。2022年度は、今回のリニューアル効果も合わせて約300社の来場を見込む。
6万品番を扱う「レッツノート」の生産にブルーヨンダーを適用
また一力氏は、流通と物流の2つの現場の課題を挙げて、それぞれでどのような現場プロセスイノベーションが可能かを示してみせた。例えば、流通の場合、店頭やバックヤードの棚の状態を可視化することで、これまで定められた時間に行っていた品出しや補充作業を棚の状態に合わせてタイムリーに行うことで、欠品や販売機会ロスの発生を抑えられるようになるという。製造業の設備保全でも、「TBM(時間基準保全)」から「CBM(状態基準保全)」への移行で効率化が可能になるが、流通の現場でも同様のことを実現できるわけだ。
パナソニック コネクトは、オートノマスサプライチェーンの自社実践に向けて、ノートPC「レッツノート」や頑丈モバイル端末「タフブック」などを生産する神戸工場(神戸市西区)で、2020年10月からブルーヨンダーのソリューションを導入している。
安達氏は「例えばレッツノートは、モデルとオプションの組み合わせから成る『品番』を基に生産を行っているが、この品番の数は約6万に達する。ブルーヨンダーの導入前は、世界各地の販売会社に1〜2カ月先の需要予測を、6万ある各品番についてExcelベースで作成してもらい、それらを手作業で集計して調達や生産、出荷などの計画を立てていた。ただし、生産に必要な部品は1カ月前に計画をもらっても調達できるとは限らないので、多めに発注しておくというのが実態だった」と説明する。
いわゆるS&OPソリューションであるブルーヨンダーを導入することで、まず大きく変わったのが販売会社がExcelで作成していた需要予測である。この需要予測をいつでも確認できるようになり、シミュレーションにかけた上で長期的かつ高精度な計画を策定できるようになった。
神戸工場におけるブルーヨンダーの導入実績としては、導入後の2021年度と導入前の2017年度の比較で、需要集計から計画作業までのリードタイム(L/T)が1週間から1時間になり、在庫を10%削減し、生産計画の期間を2カ月から12カ月に広げられたという。これらの成果も「まだ道半ば」(安達氏)とし、今後はパナソニック コネクトの現場ソリューションカンパニーのソリューションを導入することで、さらなる最適化を進めていきたい考えだ。
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