三菱重工はコロナ乗り越え増収増益、原子力や物流など脱炭素需要取り込み狙う:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
三菱重工業は2022年5月12日、2022年3月期(2021年度)の連結業績を発表した。GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント)事業や原子力事業などが利益をけん引し、材料費や輸送費などの高騰といったマイナス影響をカバーし、増収増益となった。
2022年度は事業利益2000億円目指す
2022年度の業績見通しについては、受注高は2021年度比で9%減の3兆7000億円、売上収益は同1%増の3兆9000億円、事業利益は同24.8%増の2000億円、親会社の所有者に帰属する利益は同5.7%増の1200億円としている。三菱重工は2021〜2023年度にかけて、「収益力の回復と強化」と「成長領域の開拓」を柱とする2021年事業計画を推進中だ。三菱重工 取締役社長 CEOの泉澤清次氏は、2022年度を「利益体質向上の跳躍台」と位置付けて、2023年度において事業利益率7%の達成を目指すとした。
泉澤氏は「2021年度はサービス拠点や体制の強化を進めてきた。2022年度には具体的な成果を出せるだろう。課題だった組織や拠点の再編、事業譲渡も完了した。今後は、新工場の稼働や内製力の強化を通じて利益向上につなげるとともに。デジタルトランスフォーメーション(DX)体制の強化によるサービス拡大、事業ポートフォリオの再編、国内外への原子力関連の取り組みを進める」と語った。
エネルギー供給/需要両方のニーズ取り込む
三菱重工はカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが世界的に広まっていることを背景に、エナジートランジション関連の事業機会開拓も推進する。同社は現在、エネルギー供給側と需要側のそれぞれの脱炭素ニーズに応えるための取り組みを実施している。
エネルギー供給側に関しては、CO2排出量削減の取り組みと並行してCO2回収の取り組みが必須になるとして商談を積極的に進める。回収用の製品開発や実証、回収したCO2の貯留、利活用につながる技術のオープンイノベーションを通じた探索、実用化に向けた取り組みを行う。また脱炭素やエネルギー安全保障の観点から原子力発電所が再評価されていることを受け既設プラントの再稼働や特定重大事故等対処施設、燃料サイクル確率の支援に加えて、次世代軽水炉の設計、水素製造用の高温ガス炉開発、米国テラパワーとの高速炉開発を進めるとした。
エネルギー需要側の視点では物流分野やデータセンター向けの脱炭素ニーズを満たす取り組みを進める。物流分野においては高機動AGF(Automated Guided Forklift)や自然冷媒冷凍機を既に市場に投入している。これに加えて今後は、機械システムの知能化プラットフォーム「ΣSynX(シグマシンクス)」をベースに、物流機器や電力/冷熱機器など複数機器の連携による物流システムの知能化に取り組むとした。2022年度に、飲料倉庫や冷凍/冷蔵倉庫を対象とした実証実験を実施する計画だ。
また、データセンター向けの取り組みとしては、高効率冷熱機器や発電システムを既に提供している他、コンテナ型マイクロデータセンター向けの次世代冷却技術の実証実験に取り組んでいるという。
泉澤氏は「サステナブルな社会実現にはカーボンニュートラルの達成は不可欠であり、エネルギー供給側、需要側のそれぞれに対して、当社グループが保有する多様な製品やソリューションで貢献していく。エネルギーの安定供給、経済性、安全安心のバランスが取れたカーボンニュートラルへの取り組みを通じ、サステナブル社会の実現に貢献する」と語った。
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