三菱電機の「骨太の方針」に暗雲、変圧器でも品質不正が判明し全社調査も延長:品質不正問題
三菱電機は、系統変電システム製作所の赤穂工場が製造する特別高圧以上の一部の変圧器において、顧客から求められた規格に準拠しない受入試験の実施や試験成績書へ不適切な記載、一部製品での社内基準などと異なる設計を行っていたことが判明したと発表。22製作所などにおける品質不正の全社調査も、当初目標としていた2022年4月からさらに時間を要することも明らかになった。
三菱電機は2022年4月21日、系統変電システム製作所の赤穂工場(兵庫県赤穂市)が製造する特別高圧以上の一部の変圧器において、顧客から求められた規格に準拠しない受入試験の実施や試験成績書へ不適切な記載、一部製品での社内基準などと異なる設計を行っていたことが判明したと発表した。また、2021年7月2日に設置した調査委員会による同社22製作所などにおける品質不正の調査について、当初目標としていた2022年4月での調査完了が難しくさらに時間を要することも明らかにした。
赤穂工場では、1982〜2022年3月の約40年間で、特別高圧以上の変圧器を8363台(国内向け6035台、海外向け2328台)出荷している。これらのうち、今回の調査で判明した不適切行為が行われていたことが分かっているのは3384台(国内向け1589台、海外向け1759台)である。
不適切行為は、1)耐電圧試験(雷インパルス、交流)、2)温度上昇試験、3)変圧器の損失測定における試験成績書への不適切な記載、4)絶縁設計と温度設計における社内設計基準に即さない設計の4つに分けられる。
耐電圧試験では、国内向けのJEC(電機規格調査会)規格、海外向けのIEC(国際電気標準会議)とIEEE(米国電気電子学会)規格、または客先仕様で規定された電圧値よりも低い電圧を印加していたにもかかわらず、試験成績書に規格要求または客先仕様で規定された電圧値を記載していた。また、低い電圧を印加していたため、同時に実施した部分放電測定結果に対する正確性が欠けることとなった。
温度上昇試験では、JEC規格、IEC規格、IEEE規格または客先仕様で規定された上昇限度値を超えた温度が実測されたにもかかわらず、試験成績書に上昇限度内の数値を記載していた。変圧器の損失測定では、客先要求保証値を超えた損失が実測されたにもかかわらず、試験成績書に保証値内の数値を記載していた。
絶縁設計については、JEC規格、IEC規格、IEEE規格で規定された試験電圧値に基づく社内設計基準を下回る電圧で設計していた。温度設計でも、上記の規格で規定された温度上昇値に基づく社内設計基準を上回る温度で設計しており、顧客と合意した損失の保証値を上回る設計をしていた。
これらの不適切行為は、調査委員会による調査の過程で2022年4月1日に判明。直ちに当該製品の出荷を停止した後、現在は規格に準拠した設計品でかつ全試験項目を適正に実施した製品のみを出荷している。
不適切行為が行われた可能性のある、出荷済みの8363台の特別高圧以上の変圧器を納入している顧客への説明を開始しており、現時点では今回の不適切行為を原因とする顧客からの指摘は受けていない。今後は、顧客との相談の上で特別点検などを実施する予定だという。
なお、赤穂工場における不適切行為の調査は継続中であり、新たに重大な不適切行為が判明した場合は速やかに公表するとしている、調査結果がまとまり次第、その原因や再発防止策を発表する。
三菱電機は2022年4月をめどに、22拠点の製作所などにおける品質不正の調査を完了を目指すとしていたが、今回の赤穂工場における品質不正の調査を含めて、調査委員会からさらに時間を要するという連絡を受けたという。現時点では、2022年5月下旬までに22製作所などのうち8割以上の調査作業が完了する見込みで、これらの調査結果を調査委員会から受領次第、速やかに公表するとしている。
同社は2022年4月11日に、品質不正の再発防止策として取り組みを進めてきた「組織風土改革」の指針となる「骨太の方針」を発表したばかり。改革を進めていく機運を高めようとしているタイミングで、また新たな品質不正が発覚したことになる。
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