三菱電機の品質不正解明は道半ば、非常用電源で設計ミス判明も全数交換せず:品質不正問題(1/2 ページ)
三菱電機は2021年6月末に判明した一連の不適切検査に関する調査報告書の第2報と、不適切検査に対する経営陣の責任を評価するガバナンスレビュー委員会の報告書を公表するとともに、同年10月に発表した「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組み状況を報告した。
三菱電機は2021年12月23日、オンラインで会見を開き、同年6月末に判明した一連の不適切検査に関する調査報告書の第2報と、不適切検査に対する経営陣の責任を評価するガバナンスレビュー委員会の報告書を公表するとともに、同年10月に発表した「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組み状況を報告した。
調査報告書の第2報では、2021年10月1日以降、新たに5製作所で29件の品質不正が明らかになった。調査委員会が全従業員に対して行ったアンケート調査では、品質に関わる延べ2305件(重複、公表済、懸念の指摘なども含む)の申告が寄せられたが、今回の第2報の時点ではこれらの申告のうち調査が実施されたのは42%にとどまる。三菱電機の国内22製作所のうち残り17製作所の調査結果については、次回以降に発表される予定だ。
5つの製作所で29件の品質不正
29件の品質不正のうち、7つのシステム/16件で大きな問題があると判断された。長崎製作所(長崎県時津町)の車両用空調装置と非常用電源設備、冷熱システム製作所(和歌山県和歌山市)の業務用空調冷熱機器、受配電システム製作所(香川県丸亀市)の72/84kVキュービクル形ガス絶縁開閉装置、福山製作所(広島県福山市)のUL489遮断器とCO2レーザーマーカー設備、鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)のETC設備が対象となっている。
中でも、2021年12月20日に発表された長崎製作所の非常用電源設備の品質不正は、今回の報告の中でも最も悪質な事案となる。非常用電源設備は医療機関や介護施設などに納入されているだけでなく、災害時にスプリンクラーを動作させる電源としても利用され、人の生命に大きく関わる。この非常用電源設備の制御装置の基板設計において、タンタルコンデンサーを本来とは逆向きに取り付けるミスがあった。高温下で電圧が変動する不具合を抱えることとなり、状況によっては非常用電源設備が機能停止するおそれがある。
2014年9月から製品を出荷する中で、2016年8月にこの設計ミスに気付いたにもかかわらず、全数交換を行わず、不具合が発生する都度に修理する対応方針を担当者レベルで決めた。責任者である施設システム部長にこの方針が報告されたものの、長崎製作所長には報告されず、結果として2016〜2018年度の品質不正の点検活動で見いだすことはできなかった。
この品質不正が執行役社長の漆間啓氏に報告されたのは2021年12月9日である。その後、客先への説明と不具合のある非常用電源設備を全数交換する準備を進めることを優先したこともあり、品質不正の公表タイミングは12月20日になったという。漆間氏は「設計ミスが判明したにもかかわらず不具合が発生する都度に修理するというのは間違った対応だった。原因を究明し、このようなことが起こらないようにしたい」と語る。
なお、調査報告書の第1報の対象となった名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)と長崎製作所における品質不正案件は、調査委員会による調査を終了したとしている。
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