三菱電機の品質不正解明は道半ば、非常用電源で設計ミス判明も全数交換せず:品質不正問題(2/2 ページ)
三菱電機は2021年6月末に判明した一連の不適切検査に関する調査報告書の第2報と、不適切検査に対する経営陣の責任を評価するガバナンスレビュー委員会の報告書を公表するとともに、同年10月に発表した「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組み状況を報告した。
「ものが言えない風土」は解消できるのか
「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革については、現時点で「一部実施中/一部試行中」と「検討中」がまだらに並んでおり、まだ道半ばという状況だ。多くの取り組みが2022年春〜2022年内が実施や完了のめどになっている。
例えば、品質風土改革のうち、本社主導の新たな品質保証体制の構築で決めた2年間で300億円の投資は、可児工場と長崎製作所を対象に4億9000万円分が決まっただけだ。品質不正の大きな要因となった脆弱(ぜいじゃく)な品質保証けん制機能の再構築では、本社主導の品質保障体制の大枠決定と品質保証機能の強化の全社展開の時期は2022年4月となっている。
法令順守の管理を強化するためのシステム構想と、IT化・デジタル化による品質強化の仕様決定、品質保証人材育成のためのスキル教育強化計画なども2022年3月を予定している。人事ローテーションの活性化では、品質保証部門の人員不足の解決にまず優先して取り組み、2022年6月までに計画を策定する方針だ。
組織風土改革の目玉となる、執行役社長の漆間氏をプロジェクトリーダーとする全社変革プロジェクト“チーム創生”は、2021年10月に社内公募による応募総数465人から45人を選出して活動を開始しており、同年12月11日までにグループ単位でのヒアリングなどにより全社課題の抽出、その原因と真因の究明などを行っている。今後は2022年2月初旬までに「ありたい姿」を想定し、同年3月末までに会社に対する提言書「骨太変革プラン」を策定するとしている。
また、調査報告書で指摘されている「ものが言えない風土」の解消に向けて、2021年9月から漆間氏による拠点管理者や従業員との対話活動を進めている。国内42拠点のうち、12月末までに40拠点で完了するとしている。
ガバナンス改革では、ガバナンスレビュー委員会によって内部統制システムとガバナンス体制の検証を行う。2022年3月をめどに提言をまとめる予定で、その内容を受けて取締役会などの体制の見直しや強化を進めていくことになる。
改革が一定の進捗を見せる一方で、調査報告書の第2報では、全従業員に対して行ったアンケート調査の回答は、各従業員から調査委員会宛に直接送付することにしていたにもかかわらず「上司からアンケート回答を会社に提出するように求められた」という相談が複数もたらされたことが明らかになっている。漆間氏は「調査委員会に直接送付することは何度も話したが、伝わっていなかったことは残念だ。このことを含めて問題を出し切り、改革を着実に進めていきたい」と述べている。
歴代3社長の経営責任を認定
ガバナンスレビュー委員会の報告書では、調査報告書の第1報の対象となった名古屋製作所の可児工場と長崎製作所の品質不正についての経営責任を明確化するものだ。これらの品質不正に、役員の関与や指示、黙認しているなどの事実は認められなかったものの、悪質な行為が長期間にわたり組織的に実行された原因の一つとして、品質管理・品質保証における体制上の問題が存在し、2016〜2018年度まで3回にわたる品質不正の点検活動でも改善できなかった事実を受け、執行役社長、担当執行役、取締役監査委員、取締役の経営責任があると判断した。
同報告書受けて、元執行役社長の柵山正樹氏に基本報酬月額50%の6カ月分、前執行役社長の杉山武史氏に基本報酬月額50%の6カ月分と退任慰労金の一部の自主返納を要請した。現執行役社長の漆間氏も、品質不正の舞台となった名古屋製作所を管轄するFAシステム事業本部長、長崎製作所を管轄する社会システム事業本部長を務めていたこともあり、基本報酬月額50%の4カ月分の報酬減額が行われている。
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