純国産ペレット式金属3Dプリンタの実働デモや3Dプリントオフィス家具を訴求:日本ものづくりワールド 2022
エス.ラボは「日本ものづくりワールド 2022」内の「第4回 次世代3Dプリンタ展」に出展し、ペレット材に対応する材料押し出し積層方式の金属3Dプリンタ「GEM200DG」のデモ展示と、バイオマスプラスチック材料を用いた3Dプリントオフィス家具の参考展示を行った。
エス.ラボは「日本ものづくりワールド 2022」(リアル展、東京ビッグサイト、2022年3月16〜18日)内の「第4回 次世代3Dプリンタ展」に出展し、ペレット材に対応する材料押し出し積層(MEX:Material EXtrusion/FDMやFFFと呼ばれる材料溶融積層と同義)方式の金属3Dプリンタ「GEM200DG」のデモ展示と、バイオマスプラスチック材料を用いた3Dプリントオフィス家具の参考展示を行った。なお、展示会におけるGEM200DGの実働展示は「今回が初めて」(説明員)だという。
GEM200DGは、純国産金属3Dプリンタの技術体系の確立に向けて、エス.ラボ、島津産機システムズ、第一セラモと、近畿大学 次世代基盤技術研究所の“産学4者”が取り組む共同研究の中で、実際に使用されている金属3Dプリンタである。
具体的には、材料に第一セラモの金属3Dプリンタ用コンパウンド(ペレット状)を用い、エス.ラボのGEM200DGで造形し、島津産機システムズの小型真空脱脂焼結炉「VHS-CUBE」で脱脂/焼結するという流れで共同研究が進められており、現在、産学4者のそれぞれの拠点にGEM200DGが導入され、日々フィードバックを受けているという。
ペレット式の3DプリンタであるGEM200DGは、金属/セラミックスを含む樹脂材料だけでなく、一般的な汎用(はんよう)樹脂やリサイクル材も使用できる。展示ブースでは、SDGs(持続可能な開発目標)や循環型社会の実現にも貢献できる装置としての側面もアピールポイントとして掲げていた。
なお、GEM200DGは装置として既に提供を開始しており、産学4者の共同研究によるフィードバックなどは随時、製品へ反映して進化させていくという。
また、ペレット式3Dプリンタ市場における同社の強みについて、説明員は「ペレット材を利用できるMEX方式の3Dプリンタの認知度はまだそれほど高くはないが、先日、大手企業であるセイコーエプソンからも装置が発表されるなど、今後の市場の盛り上がりに期待している。また、そうした中で、当社は装置の企画から設計、製造、出荷、サポートまで一貫して行っており、大きなものから小さなものまで要求に合わせて柔軟に装置を開発できる強みがある」と強調。最近の話題でいえば、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台プロジェクトにおいて、7000枚ものパネル製造に用いられた3Dプリントシステムもエス.ラボが手掛けている。
一方、バイオマスプラスチック材料を用いた3Dプリントオフィス家具は、オカムラと慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ(代表:田中浩也氏)による産学共同研究プロジェクトの成果であり、エス.ラボは生産設備を提供する立場として参画。実際に作られたチェアやテーブルなどは、オカムラが「Up-Ringシリーズ」として製品化を発表しており、2022年中の量産化/販売開始に向けて、製品開発、生産技術の最終調整が進められている。
「オフィス家具として販売するということで、非常に厳しい耐久試験などが行われた。実際、材料開発だけで約1年を要し、耐久試験の対応に半年ほどかかった。その間、ノズル径の調整などの要求に応えながら、生産設備の面で製品化に向けた貢献ができた。こうしたプロジェクトに参画できたことをうれしく思う」(説明員)
その他、展示ブースでは豊田合成がオフィスのフリーアドレス化の一環として、従業員に順次配布しているモバイルバック「Re-S“Mobile Bag”」の参考展示も行われていた。これは“できる限り生産工程で発生する廃材を活用しよう!”という志の下、企画されたバッグで、ハンドルクラクション部、革巻きハンドル用革、エアバッグ生地などの廃材や不良革/不良生地を有効活用して作られている。このうち、ハンドルクラクション部の廃材から作られた本体パネル部分の製造に、エス.ラボのペレット式3Dプリンタが用いられているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 純国産金属3Dプリンタの技術体系の確立に向けて産学4者が共同研究を始動
島津産機システムズ、エス.ラボ、第一セラモの装置/部材メーカー3社と、近畿大学 次世代基盤技術研究所は、材料押し出し積層(MEX)方式の金属3Dプリンタによる金属、セラミックス部品の開発技術の革新を目的とする共同研究を開始した。 - 3Dプリンタだから実現できた東京五輪表彰台プロジェクトとその先【前編】
本来ゴミとして捨てられてしまう洗剤容器などの使用済みプラスチックを材料に、3Dプリンティング技術によって新たな命が吹き込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台。その製作プロジェクトの成功を支えた慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏と、特任助教の湯浅亮平氏に表彰台製作の舞台裏と、その先に目指すものについて話を聞いた。 - 3×3×3mの超大型造形が可能な3Dプリンタでリサイクルプラ製ベンチを製作
エス.ラボは、最大造形サイズが3000×3000×3000mmの超大型ペレット式3Dプリンタ「茶室」(開発名)を開発。同時に、慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ、積彩と共同で、茶室と材料にリサイクルプラスチックを用いた大型プラスチック製ベンチの造形にも成功した。 - エプソンが産業用3Dプリンタを開発、材料押し出し式で汎用材料に対応
セイコーエプソンは、汎用材料を使用できる産業用3Dプリンタを開発したことを発表した。今後、自社内において商業用/産業用機器などの一部部品の量産に、開発した産業用3Dプリンタを活用しつつ、装置としての完成度を高め、商品化を目指す。 - 前田技研、ExtraBoldの大型3D付加製造機を活用した造形サービスを開始
前田技研は、ExtraBoldの大型3D付加製造機「EXF-12」を活用した造形受託サービス事業を開始した。最大造形サイズが1700×1300×1000mmで、ABS、PP、PLA、エラストマーなどの熱可塑性樹脂(ペレット材)を材料として利用できる。 - 機械学習でシミュレーション結果を高速に予測、車の空力解析が数日から数分へ
科学計算総合研究所は「日本ものづくりワールド 2022」内の「第33回 設計・製造ソリューション展(DMS)」に出展し、機械学習によってシミュレーション結果を高速に予測するアプリケーション「RICOS Lightning」を展示。従来のCAEを用いたシミュレーション工程にかかる時間を大幅に短縮でき、製品性能の向上につなげられる点をアピールした。