リチウムイオン電池のリユース/リサイクル市場、廃棄量が想定下回るが対応急務:電気自動車
矢野経済研究所は2022年2月15日、リチウムイオン電池のリユースとリサイクルの市場に関する調査結果を発表した。
矢野経済研究所は2022年2月15日、リチウムイオン電池のリユースとリサイクルの市場に関する調査結果を発表した。
市場調査は小型の民生用や車載用、電力貯蔵用を対象に実施した。2021年のグローバルでのリユース市場規模は1790MWhと推計。また、同年のリサイクルの市場規模はコバルト、ニッケル、リチウムの回収量の合計で4万6810トンと見込む。コバルトやニッケルでは既に一定規模のリサイクルを実施できているのに対し、リチウムのリサイクル技術は研究開発段階にある。
リチウムイオン電池のリユース、リサイクルは中国が市場の中心になっているという。中国では車載用リチウムイオン電池の廃棄量が多く、リユースできる電池も多い。リユース後の需要先としては、低速EV(電気自動車)や電力貯蔵用がメインだという。
2021年のグローバルでの車載用リチウムイオン電池の廃棄重量は9万6850トンと見込む。地域別では中国が94%を占める。2015年ごろから政府主導でPHEV(プラグインハイブリッド車)やEVを普及させてきたため、廃棄量も先行しているという。ただ、廃棄された車載用リチウムイオン電池の回収量は想定を下回っている。国の認定を受けた企業以外にも廃棄された車載用リチウムイオン電池が流入している。EVやPHEVが中古車として国外に輸出されることも回収量低下につながっているとしている。
世界各国が気候変動対策で電動車の普及を加速させているため、将来の大量廃棄も想定される。EUは電池に関する規則案でリチウムイオン電池のリサイクル材の使用を強制する項目を盛り込んでおり、これを受けたリチウムイオン電池のリユースとリサイクルの注目度が高まっている。将来に向けてリサイクル材を確保するための取り組みも進んでいる。リチウムイオン電池のリユースとリサイクルは今後の成長が期待されているものの、成長を左右する車載用の廃棄量が想定よりも少ない状況にある。
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