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高画素化進む遠赤外線センサー、パナソニックが非球面レンズの量産コストを半減組み込み開発ニュース(2/2 ページ)

パナソニックが高解像の遠赤外線センサーに必要な遠赤外非球面レンズの量産技術を開発。硫黄やセレンなどを含むカルコゲナイドガラスと、同社がデジタルカメラ向けなどに培ってきたガラスモールド工法と金型技術を組み合わせることにより、従来工法と比べて高歩留まりかつコストの半減を実現した。

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従来のガラスモールド工法以上の進化を果たす

 今回開発した技術は、ゲルマニウム製非球面レンズの課題を解決し、低コストで遠赤外センサーに対応する非球面レンズを量産するためのものだ。まず、材料としては、ゲルマニウムと同様に遠赤外線に対する高い透過率を持つカルコゲナイドガラスを用いている。パナソニックは、これまで培ってきたガラスモールド工法と金型技術を基に、カルコゲナイドガラス製の非球面レンズを量産する技術を確立した。

開発したカルコゲナイドガラス製非球面レンズの量産技術
開発したカルコゲナイドガラス製非球面レンズの量産技術[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 特筆すべきは、従来のガラスモールド工法以上に進化している点だろう。ガラスモールド工法では、成形前に前加工としてガラス材料を研削、研磨する必要がある。一般的には、硝材のインゴットから所定の大きさに切り出したのちレンズ形状に近い形まで研削するため、多くの材料を廃棄するだけでなく、その後の研磨も含めると多くの加工時間が必要となりコスト高になる。今回の技術では、「材料となるカルコゲナイドガラスに対して研削、研磨などの機械加工を行うことなく、一定の前処理を行うだけでガラスモールド成形を行える」(橋本氏)。これによって、前加工にかかっていた工数を大幅に低減できるため、レンズ価格を従来と比べて半減することが可能になった。

 また、カルコゲナイドガラスは成形時の温度変化による粘性の変化が大きいため、安定的にモールド成形することが難しい。そこで、熱変動を緩やかにする新たな金型材料を採用した専用金型を開発。この金型技術により、従来の可視光用ガラスの成形機をそのまま使用しながら高い歩留まりも達成することで、高品質で低価格なカルコゲナイドレンズの提供につなげた。

 カルコゲナイドガラスは、ゲルマニウムと比べて非球面レンズに加工する際の量産性が高い一方で、硬度が低いため「欠けやすい」という課題がある。遠赤外センサーと併せて光学系を構成する鏡筒に組み付ける際に、レンズ外周部に欠けが発生すると所定の性能を発揮できなくなってしまう。この課題を解決するために開発したのが、フレーム一体レンズを実現するインサート成形技術である。これによって、鏡筒との接触部であるレンズ外周の欠けを防止するリングなどのフレームを装着した状態でのレンズ成形が可能になる。「接着剤を使わずに遠赤外用ガラスのフレーム一体レンズを製造するのは世界初になる」(橋本氏)という。

カルコゲナイドガラスは欠けやすい
カルコゲナイドガラスは欠けやすい[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 このインサート成形技術は、接着剤成分の一部が揮発する脱ガスなどの影響がないこともメリットだ。さらに、レンズとフレーム間の気密性についても、ヘリウムリーク試験でリーク量1×10−9Pa・m3/秒以下という高気密を実現できる。一体成形するフレームに鏡筒形状のものを利用すれば、内部に配置する遠赤外センサーごと不活性ガスを用いた封止などが可能になり、内部の断熱やセンサーのカバーレスを実現できるので、熱影響の減少や透過率の向上でセンサーの高性能化に寄与できるとしている。なお、フレームの材料は金属を用いる必要がある。

接着剤不要のインサート成形技術でフレーム一体レンズを実現
接着剤不要のインサート成形技術でフレーム一体レンズを実現[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 提供可能なレンズサイズは直径3〜40mmで、非球面レンズだけでなく回折レンズの製造も可能だ。遠赤外センサーのさらなる高画素化が進むことも念頭に、より大きなレンズサイズへの対応も検討している。

鏡筒タイプ直径8mmレンズ直径14mmレンズ 鏡筒タイプのフレームと一体になった直径8mmのレンズ(左)と、直径14mmのレンズ単体とフレーム一体レンズ(右)[クリックで拡大]
直径30mmレンズ直径15mm回折レンズ フレーム一体の直径30mmのレンズ(左)と、直径15mmの回折レンズ(右)[クリックで拡大]

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