メタレンズでテラヘルツ発振器の高指向性化に成功、6Gへの展開に期待:組み込み開発ニュース
ロームと東京農工大学は、超高屈折率かつ無反射のメタサーフェス材料を使って、焦点距離1mmの平面レンズ(メタレンズ)を開発した。これにより、テラヘルツ波を発振する共鳴トンネルダイオードの指向性を3倍高めることに成功した。
ロームは2021年7月7日、東京農工大学大学院と共同で、超高屈折率かつ無反射のメタサーフェス材料を使って、焦点距離1mmと極短焦点の平面レンズ(メタレンズ)を開発したと発表した。0.3THzのテラヘルツ波を室温で発振できる共鳴トンネルダイオードに搭載し、共鳴トンネルダイオード単体の場合と比べて指向性を3倍高めることに成功した。
メタレンズの直径は2mmで、厚さは24μm、F/D比は0.5、開口数NAは0.7だ。シクロオレフィンポリマーフィルムの両面に、厚さ0.5μmの銅ワイヤーを対称に配置し、中心部から端部に向けてレンズの屈折率が低くなるように設計した。屈折率は中心部が18.5、端部が3.5で、この勾配を利用して、共鳴トンネルダイオードから発振された放射状のテラヘルツ波を、指向性の鋭い平面波に変換している。
実験では、メタレンズの追加によってパワー密度3倍の高指向性化を確認した。ビーム半値幅は、共鳴トンネルダイオード単体の場合にyz面で32度、xz面で42度に対して、メタレンズを搭載するとそれぞれ18度、14度まで絞れることが分かった。
従来の市販テラヘルツレンズは、焦点距離が10mm程度、形状も厚さ10mmのドーム型と、今回開発したメタレンズより長焦点で大きい。コンパクトで高指向性のテラヘルツ発振器として、6G(Beyond 5G)超高速無線通信、各種センサー機器、X線に代わる安心安全なイメージングなどへの応用が期待される。
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