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深刻な材料不足と高騰化、設計現場で何ができるか?MONOist 2022年展望(2/3 ページ)

2022年は引き続き、半導体不足とともに、樹脂不足が製造業に大きな影響を与える見通しです。材料や調達部品が手に入らず、代替品の利用を検討するなど各社対策を講じ始めていますが、設計現場として何かできることはないでしょうか? 「樹脂使用量の削減」「部品点数の削減」「代替品への対応」という3つの視点で、どのようなアプローチがとれるのか、その可能性について考えていきます。

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3.部品の体積削減

 「3.部品の体積削減」は、一言でいってしまえば“軽量化”です。部品形状などの見直しを図ることで、使用する材料の量を減らすというアプローチです。実際、量産品の場合など、部品の材料費削減、つまり肉抜きなどによる部品の体積削減が強く求められるケースがありますが、その際、剛性などをいかに維持するかが肝となってきます。このときによく用いられるのが「トポロジー最適化(位相最適化)」に代表される形状最適化です。

 トポロジー最適化とは、与えられた設計空間と制約条件(体積率や最大/最小寸法など)に基づき、対象の形状から余計な材料を取り除き、必要な部分だけを残して最適な形状を導出するシミュレーション技術を用いた設計手法です。

 軽量化と高剛性化のように、従来トレードオフの関係にあるような難しい設計要求に応える際に用いられ、近年、3Dプリンタの技術革新などの後押しもあって注目を集めています。また、親和性の高い3Dプリンタ意外にも、製造方法をあらかじめ加味することで、従来の加工方式でもトポロジー最適化を適用した部品を作ることが可能です。

 ちなみに、「ジェネレーティブデザイン」との違いですが、いずれも“制約条件に基づいて”という前提の下、トポロジー最適化が与えられたベース形状から余計なモノを取り除く手法であるのに対して、ジェネレーティブデザインはAI(人工知能)によって、何もない状態から最適な形状を導き出す(モノを創り出す)アプローチだといえます。

 トポロジー最適化の課題としては、導出される結果はあくまでも設計者が指定した制約条件に基づく最適形状であって、設定値によって得られる結果が大きく異なる可能性があるという点です。また、「誰がやっても同じような形状が導出されてしまう」「(後工程で)加工可能な最終形状にしたら逆に重量が増えてしまった」などという問題も起こり得ますので、使いこなしにはそれなりの経験とノウハウが必要となります。

部品点数の削減

 もう少し、視点を広げて考えてみると「部品点数の削減」も材料の使用量を削減する(ムダな材料を減らす)有効な手段になり得るかもしれません。“省パーツ化”ともいえる、そのアプローチとしては、例えば、

  1. 3Dプリンタによる一体造形
  2. メタマテリアル/コンプライアントメカニズムの活用

などが考えられます。

1.3Dプリンタによる一体造形

 「1.3Dプリンタによる一体造形」に関しては、既に皆さんもよくご存じのことかと思いますが、従来、複数の部品を組み立てることで実現していたものを、3Dプリンタによって、はじめから1つの部品として製造(一体造形)してしまうというアプローチです。うまく活用することで、部品点数の大幅な削減が期待できます。

 組み立て工数の削減や品質のバラツキを低減させる手段として有効であることは言うまでもありませんが、従来工法にとらわれない3Dプリンタに適した設計を適用することで、一体造形とともに、大幅な軽量化を実現できる可能性もあります。ちなみに“3Dプリンタに適した設計”、つまり、3Dプリンタによる効果を最大限に引き出すための設計手法のことを「DfAM(Design for Additive Manufacturing)」と呼びます。

 3Dプリンタの技術進化とともに、最終製品や実部品などへの適用事例も増えつつありますが、あらゆる部品を3Dプリンタで製造するということではなく、3Dプリンタに適した部分にうまく活用していくことが重要です。その見極めには、DfAMの知識だけではなく、使用する3Dプリンタや材料の特性も併せて理解しておく必要があるでしょう。

 また、最終製品への適用となると、出来上がった造形部品に対しての性能評価やテストなどを、時間をかけて行わなければなりません。さらに、材料費という観点からも従来工法よりも割高になる傾向がまだ強いと考えられます。

 (余談として)材料不足、一体造形の話題とは少し離れてしまいますが、不足しているモノを代替的に入手するための手段としての“3Dプリンタの有効性”は、コロナ禍初期に世界的に不足していた、人工呼吸器用部品、フェイスシールド、マスク、検査用スワブ(綿棒状の検体採取キット)の製造で大活躍したことは記憶に新しいところです。

2.メタマテリアル/コンプライアントメカニズムの活用

 次に「2.メタマテリアル/コンプライアントメカニズムの活用」です。「メタマテリアル」とは、ある物質が従来備え持つ物理的な特性を超えた機能を、人工的に設計された幾何構造によって付加することを意味します。弾力や変形などの特性を構造によって制御するアプローチで、力の方向により物性を変えるといった異方性のあるものを任意に作り出せるのがメタマテリアルの特徴の1つといえます。

 一方、「コンプライアントメカニズム」とは、力を加えると変形し、力を取り除くと元に戻る弾性変形を能動的に活用したアプローチで、可動部の動きを弾性変形で生み出すことができます。例えば、部品同士を組み付けた際の“遊び”をなくした精密な動きを再現したり、部品間の摩擦や摩耗を防止したり、組み立てレスで可動部の省スペース化が実現できたりします。

コンプライアントメカニズムを適用したロボットハンド
コンプライアントメカニズムを適用したロボットハンド。約40点ものパーツで構成されている既存のロボットハンドの動きを、3Dプリンタで一体造形したロボットハンドで再現する[クリックで拡大]

 メタマテリアル/コンプライアントメカニズムといえば、東大発ベンチャーとして知られるNature Architectsが有名です。同社は、メタマテリアル/コンプライアントメカニズムを活用し、ユーザーが求める機能要件をダイレクトに実現する設計アルゴリズム「DFM(Direct Functional Modeling)」を開発。例えば、振動、熱伝導、変形、軽量化といったさまざまな物理的な機能を、構造として製品に組み込む形状設計ソリューションを提供し、高付加価値製品の実現を支援しています。実際に同社Webサイトで公開されている適用例などを見てみると、よりイメージがつかみやすいかと思います。

 従来、複数部品の組み立てや異なる素材を複合させることで実現していた物理的な機能要件などを、組み立てなしの一体構造で作り出せるというのは、部品点数の削減はもちろんのこと、材料使用量を抑えるという意味でも非常に魅力的なアプローチだといえます。

 以上、「1.3Dプリンタによる一体造形」も「2.メタマテリアル/コンプライアントメカニズムの活用」も材料不足の直接的な解決策とは言い切れないかもしれませんが、活用の仕方によっては、樹脂材料の使用量を減らすための有効手段になり得るかもしれません。また、これまでの常識にとらわれることなく、設計やモノづくりの可能性を大きく広げてくれるという意味合いからも、特にメタマテリアル/コンプライアントメカニズムの活用は押さえておいて損はないでしょう。

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