深刻な材料不足と高騰化、設計現場で何ができるか?:MONOist 2022年展望(3/3 ページ)
2022年は引き続き、半導体不足とともに、樹脂不足が製造業に大きな影響を与える見通しです。材料や調達部品が手に入らず、代替品の利用を検討するなど各社対策を講じ始めていますが、設計現場として何かできることはないでしょうか? 「樹脂使用量の削減」「部品点数の削減」「代替品への対応」という3つの視点で、どのようなアプローチがとれるのか、その可能性について考えていきます。
代替品への対応
最後に「代替品への対応」に関する、設計環境の在り方についても簡単に触れておきたいと思います。
樹脂だけでなく、半導体不足の先行きが見通せない今、自動車業界などでは特注の半導体を汎用(はんよう)品で代替して、急場をしのごうとする動きも見られはじめています。当然、ソフトウェアなどの設計変更を伴うわけですが、調達リスクや生産計画へのマイナス影響を回避するための苦渋の決断といえるでしょう。
半導体不足が長期化すれば、こうした選択は、自動車業界に限った話ではなくなるかもしれません。普段使用している半導体や電子部品を汎用の代替品に置き換えるといった大きな変更に、柔軟に対応するには、設計現場としてこれまで以上にエレ/メカ/ソフトのよりシームレスな連携が重要になっていくと考えられます。
特に、各領域にまたがって、それぞれの変更が互いに影響し合うような場合、複数の関係者が同一環境上でコラボレーションしながら、設計開発やシミュレーション、評価などをシームレスに進められる環境が欠かせないものとなるでしょう。その際、シミュレーションの果たす役割も非常に大きいといえます。また、言うまでもありませんが、樹脂部品を代替材料やリサイクル材に置き換えるといった場合においても、設計とシミュレーションのサイクルを効率的に回せる環境が求められます。
以上を踏まえると、設計現場としても、プラットフォーム(あるいはクラウドプラットフォーム)を活用した製品開発の重要性がより一層高まっていくことが予想されます。
その他にできること
また、「その他の対策」として、グローバル展開しているオンデマンド受託製造業者を活用するというのも有効な手段といえるかもしれません。オンデマンド受託製造サービスを展開するProto Labs(プロトラブズ)では、グローバル展開の強みを生かし、各国(米国、日本、英国、スウェーデン、ドイツ、フランス、イタリア)の拠点で抱える豊富な材料を融通し合うことにより、材料不足の影響を最小限に抑えた安定的な受託製造サービスを実現しているといいます。
いかがでしょうか? 使用する材料を置き換える/削減する、部品点数を減らすために工法を変えるなど、いずれも簡単ではないアプローチであり、ここで紹介し切れなかったさまざまな視点を考慮し、かつ実現可能性を加味したあらゆる課題をクリアした上で、ようやく成立する内容がほとんどだったかと思います。
そういう意味で、材料不足という課題に対して、短期的にできることは少ないのかもしれませんが、無策のまま次に来るかもしれない不測の事態に対峙するのではなく、本稿をヒントに、“作りたくても作れない”といった状況をどうやったら回避できるかを考え、材料不足への対策を講じるきっかけにしていただければ幸いです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 製造業こそ「メタバース」に真剣に向き合うべき
2022年は「メタバース」に関するさまざまな技術やサービスが登場すると予想されます。単なるバズワードとして捉えている方も多いかと思いますが、ユースケースをひも解いてみると、モノづくりに携わる皆さんや設計者の方々にも深く関わっていることが見えてきます。一体どんな世界をもたらしてくれるのでしょうか。 - 半導体や樹脂不足、サプライチェーン混乱への対応に迫られる2022年
ワクチン接種なども含め“Withコロナ”への動きが進んだ2021年。製造業においても復調が期待されたが、そこに水を差したのが半導体不足などを含むサプライチェーン混乱だ。2022年はこれらへの一時的対処が進む一方、今後も断続的に生まれるサプライチェーンの問題を抑制するような根本的な対応強化も進む見込みだ。 - ナイロン不足は長期化の見通し、ヘキサメチレンジアミンを使う他の素材への影響も
ナイロンの供給に関しては2018年ごろにも問題が発生したが、今回はさまざまな原因が絡み合っていることで供給不足が長期化しかねない。エンジニアリングプラスチックを手掛けるオランダの化学大手DSMに、ナイロンと代替素材の状況について話を聞いた。 - 3Dプリンタだから実現できた東京五輪表彰台プロジェクトとその先【前編】
本来ゴミとして捨てられてしまう洗剤容器などの使用済みプラスチックを材料に、3Dプリンティング技術によって新たな命が吹き込まれた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)表彰台。その製作プロジェクトの成功を支えた慶應義塾大学 環境情報学部 教授の田中浩也氏と、特任助教の湯浅亮平氏に表彰台製作の舞台裏と、その先に目指すものについて話を聞いた。 - トポロジー最適化ってどうなってるの? どうやるの?
今回は、「そもそもトポロジー最適化の背景にあるものは何か」ということと、基本的な流れについてお話します。 - いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。