低消費電力で高速、混載メモリ用STT-MRAMの書き換え技術を開発:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスは、STT-MRAMのデータを低消費電力かつ高速で書き換えられる技術を開発した。試作チップの測定では、書き換えエネルギーを72%低減し、電圧印加時間を50%削減した。
ルネサス エレクトロニクスは2021年12月14日、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気抵抗メモリ)のデータを低消費電力かつ高速で書き換えられる技術を開発したと発表した。IoT(モノのインターネット)向けマイコンにおいて、性能と低消費電力の両立が期待できる。
MRAMは、磁気トンネル結合(MTJ)素子の抵抗状態の高低で情報を記憶する。同社は、スロープパルス方式を用いた自己終端書き換え技術と、同時書き換えビット数の最適化技術を組み合わせて、書き換え時のエネルギーと電圧印加時間の低減を可能にした。
高抵抗状態から低抵抗状態への書き換え時に一定電圧を印加するのではなく、時間とともに電圧を徐々に高めるスロープパルス方式を採用することで、メモリセル特性にばらつきがあっても、最終的に書き換え完了を検知して印加を終了できる。書き換え方向が逆の場合は、電流源回路で書き換え電流を徐々に高め、電圧検知回路で書き換え完了を検知する。
さらに、書き換え特性ばらつきの90%以上のビットに対して、スロープパルス方式を利用した自己終端書き換えを実施し、残りの10%以下のビットはチャージポンプ回路を利用して書き換える。これにより、書き換え電圧の印加は2回で済み、従来より印加時間を短縮できる。大多数のビットは、外部電源からの降圧を利用するため、書き換えエネルギーも削減できる。
同技術を実証するため、16nm FinFETロジック混載MRAMプロセスにおいて、20MビットのMRAMメモリセルアレイを搭載したテストチップを試作して測定した。その結果、書き換えエネルギーを72%低減し、電圧印加時間を50%削減できることを確認した。
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