ソニー製STT-MRAMをSSDに搭載、Nextorageがデモを披露:IoT&5Gソリューション展
ソニーグループのメモリストレージベンダーであるNextorageは、「第6回 IoT&5Gソリューション展 秋」において、STT-MRAMを記憶媒体として用いたPCI-ExpressベースのSSDのデモンストレーションを披露した。STT-MRAMは、ソニーセミコンダクターソリューションズで開発中のものを使用している。
ソニーグループのメモリストレージベンダーであるNextorageは、「第6回 IoT&5Gソリューション展 秋」(2020年10月28〜30日、幕張メッセ)において、STT-MRAM(スピン注入磁気反転型磁気抵抗メモリ)を記憶媒体として用いたPCI-ExpressベースのSSDのデモンストレーションを披露した。STT-MRAMは、ソニーセミコンダクターソリューションズで開発中のものを使用している。
NANDフラッシュメモリに次ぐ、次世代不揮発性メモリとして期待されてきたのが、2つの磁性体層の間に絶縁体層を挟み込んだ磁気トンネル接合(MTJ)構造の素子の磁気抵抗の状態によりデータの0と1を区別するMRAM(磁気抵抗メモリ)である。NANDフラッシュメモリをはじめとする他の不揮発性メモリと比べてデータの読み書きが高速なことが特徴だ。ただし、MTJの磁化の方向を変えるのに外部磁界を用いるため大容量化が難しいという課題があった。
これに対してSTT-MRAMは、電子の持つ微弱な磁石の性質である電子スピンの特性を生かして磁化の方向を変える「スピン注入方式」を採用することで大容量化が可能になったMRAMであり、各社の開発が進んでいる。ソニーセミコンダクターソリューションズも、STT-MRAMに開発に注力している。
大容量化が可能なSTT-MRAMは、Nextorageが手掛けるストレージ商品に応用することができる。例えば、現行のハイエンドSSDは、高速性を出すためにDRAMを搭載しているが、これがコストアップの要因になっている。そこで、SSDコントローラーに用いている小容量のSRAMに替えて比較的容量の大きいSTT-MRAMを組み込むことで、DRAMを用いずに高速のSSDを実現できる。特に、今後も高速化が見込まれているPCI-Express接続のSSDで大きな効果が得られる可能性が高い。
Nextorageは、2019年10月にソニー子会社のソニーストレージメディアソリューションズの100%出資で独立したメモリストレージベンダーであり、SDカードなどのメモリカードとSSDが主力事業となっている。PCI-Express接続のSSDにも注力しており、今回のSTT-MRAMを用いたデモは今後のSSDの高速化を見据えた研究開発の取り組みの一例となる。
デモでは、容量655KBのSTT-MRAMを記憶媒体としてNextorageのSSDコントローラーボードで制御するストレージを、LinuxシステムにマウントしてPCドライブとして認識されている様子などを見せた。
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