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自動車が必要とする1TBのフラッシュメモリの実現へ、従来比2.5倍の高速処理も車載半導体

ウエスタンデジタルは2018年10月18日、車載用NAND型フラッシュメモリの新製品「iNAND AT EU312 UFS EFD」を発表した。

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ウエスタンデジタル 組み込みソリューション担当 シニアディレクターのオデッド・サギー氏に話を聞いた。

 ウエスタンデジタルは2018年10月18日、車載用NAND型フラッシュメモリの新製品「iNAND AT EU312 UFS EFD」を発表した。自動運転車やコネクテッドカーで求められる車載ストレージの大容量化や高速処理に対応するため、自動車向けとしては初めて記録方式がTLC(Triple Level Cell/1セル当たり3ビット)の3D NANDフラッシュ技術を採用した。また、UFS(ユニバーサルフラッシュストレージ)規格に準拠したインタフェースに対応することで、データの書き込み、読み取りの性能を従来比で最大2.5倍に高めた。16G〜256GBの幅広い容量を提供する。2018年第4四半期の中ごろから出荷を開始する。

 2020〜2021年以降に向けて自動車のさまざまな新機能が実用化される。例えば、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)やV2X(車車間、路車間、歩車間通信)、高精度地図を基にした自動運転などがある。運転に必要な情報を表示するため、車内にはディスプレイも多用されていく。これらは全て大容量のデータを扱うため、車載フラッシュメモリの役割が増している。


フラッシュメモリを必要とする新機能が自動車に増えていく(クリックして拡大) 出典:ウエスタンデジタル

 これまで1台の自動車で扱うデータ量が64GBだったのに対し、今後は先述したような機能1つのシステムでも256GB程度まで大容量化が進む。また、機能を快適に使うため、書き込みと読み取りの両方を高速処理することも課題となっている。これに対応するため、車載フラッシュメモリはデータ保持や書き込み回数に対する耐久性を向上することが求められている。数年にわたる自動車の使用期間に耐えられる長寿命化や、車載基準の動作温度域の広さも必須となる。

 車載フラッシュメモリは、NOR型からNAND型になり、2D NANDフラッシュ技術が主流となって現在に至る。フラッシュメモリの記録方式は、容量拡大に対応するためSLC(1セル当たり1ビット)ではなくMLC(Multi Level Cell/1セル当たり2ビット)が主流になった。

 今後、1台の自動車が1TBまで扱うケースが増えてくることに対応するため、ウエスタンデジタルは今回、大容量化を図れるTLCの3D NANDフラッシュメモリを新製品として投入した。3D NANDフラッシュメモリは、メモリセルストリングを垂直方向に立てることによって、シリコン面積あたりの記憶容量を増やす。TLCの3D NANDフラッシュメモリは、MLCの2D NANDフラッシュメモリと比較して、セル間インタフェースを削減できることや、電荷トラップ層あたりの電子増加によって信頼性を向上することが可能になるという。データ保持期間も伸ばすことができる。

 メモリの大容量化に加えて、組み込みストレージインタフェースをUFS対応としたことで、従来のeMMC(embedded Multi Media Card)の2.5倍となる高速処理も実現した。eMMCは1秒あたり400MB(400MB/s)が限界だったのに対し、新製品はUFC 2.1に対応することで1秒あたり1440MBに処理性能を引き上げた。これにより、書き込みは最大で1秒あたり550MB、読み取りは800MBまで対応する。

 ウエスタンデジタルは2019年末にUFC 3.0に対応した3D NANDフラッシュメモリを投入する計画で、これにより1秒あたり3000MBの高速処理も実現する。この水準について同社は、ドライバーが運転席に座る自動運転車であればカバーできると見込んでいる。


組み込みストレージインタフェースの進化により、高速処理を実現する(クリックして拡大) 出典:ウエスタンデジタル

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