VWのコネクテッドカーの肝は「vw.OS」、カーシェアなどサービスの土台に:モビリティサービス(1/2 ページ)
Volkswagen(VW)は2018年8月23日(現地時間)、2019年第2四半期から電気自動車(EV)のカーシェアリング「We Share」を開始すると発表した。クルマを所有しない人を主なターゲットとし、EVやカーシェアリングの利便性を知ってもらうことが狙いとなる。
Volkswagen(VW)は2018年8月23日(現地時間)、2019年第2四半期から電気自動車(EV)のカーシェアリング「We Share」を開始すると発表した。クルマを所有しない人を主なターゲットとし、EVやカーシェアリングの利便性を知ってもらうことが狙いとなる。
ベルリンに「ゴルフ」のEVモデルである「e-Golf」1500台と、「up!」のEVモデルの「e-up!」500台を配備する。2020年からはドイツ国内や欧州、北米の人口100万人以上の都市を対象にカーシェアリングの実施地域を拡大する計画だ。また、2020年に発売予定のEV「I.D.シリーズ」も、WeShareに順次導入していく。
We Shareの料金体系の詳細については、他社の競合サービスとの兼ね合いから同日時点では非公表としたが、競合と比較しても手ごろな価格を設定しているという。
EVシェアリングは需要ありと判断
We Shareは、専用の貸し出しステーションがなく、借りた場所への返却が不要な、フリーフローティング型のサービスとなる。ベルリンの人口は2016年で約357万人だ。VWはベルリンについて、人口の規模と密度からカーシェアリングの理想的な市場だとしている。ベルリンでは既にさまざまなカーシェアリングサービスが展開されており、また、フリーフローティング型は公共の駐車場や路上の駐車スペースを返却場所として使うため、駐車スペースの競争率が上がることが問題になることがあるが、ベルリンには十分なスペースがあり、フリーフローティング型の需要があると見ている。
走行距離はe-Golfが300km、e-up!は185kmで、毎日の充電は必要なく、都市部の移動には距離として十分だと見込む。市内に充電インフラがそろっているが、VWが開発したクイックチャージシステムも既に利用可能だとしている。
VWだけでなく、ドイツの他の自動車メーカーも既にカーシェアリングサービスを提供している。Daimler(ダイムラー)のcar2goは欧州や北米、アジアで1万5000台のカーシェアリング車両を配備する。car2goでもEVは使用可能だが、3都市の1400台に限られる。BMWのDriveNowは、欧州13都市に合計6000台を展開中で、利用可能な車両にはEV「i3」も含まれている。
VWのWe Shareがベルリン1都市で、EVのみ2000台を展開することを考えると、他の自動車メーカーのサービスと比較しても特徴的な内容だといえる。
また、VWが展開する自動運転車によるライドシェアサービス「MOIA」は、将来的にWe Shareと同じ1つのプラットフォームに統合していく考えだ。
コネクテッドカーを動かすのはVW独自のOS
WeShareは、VWグループのコネクテッドカー戦略「Volkswagen We」で提供するサービスの1つ。Volkswagen Weでは、地域限定ではあるが既に3つのアプリを提供中だ。1つ目が駐車場の空きの検索と駐車料金の支払いを行う「We Park」だ。2つ目は、自家用車のトランクに荷物を届ける「We Deliver」、3つ目はWe Parkと併用する「We Experience」で、利用する駐車場付近に関連した小売事業者からパーソナライズされた案内や情報を受け取ることができる。
こうしたサービスの実現には、クルマをインターネットにつなげることが不可欠だ。コネクティビティについて、VWは2つのアプローチで普及を進める。1つは既に販売済みの車両に向けたもので、専用のコネクター「Volkswagen Connect」を用いる。これにより、インターネットにつながっていなかった150万台の車両がコネクテッドカーとなる。
もう1つのコネクティビティのアプローチは、I.D.シリーズから展開する新しいITアーキテクチャだ。現在のクルマに搭載されている70個以上のコントロールユニットとそれぞれに対応した固有のソフトウェアで構成されており、複雑なアーキテクチャとなっている。I.D.シリーズからは、少数のセントラルコンピュータに置き換える。それらのセントラルコンピュータは「vw.OS」と呼ばれる単一のOS(基本ソフト)で動作させる。
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