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現実解を模索する導入3年目のローカル5G、Wi-Fi 6Eはダークホースになり得るかMONOist 2022年展望(3/3 ページ)

さまざまな事業主体が5Gを自営網として利用できるローカル5Gの国内導入が始まって2022年は3年目になる。4.6G〜4.9GHzの周波数帯を用いるサブ6とSA(Stand Alone)構成という組み合わせが現実解として主流になる中、導入コスト削減に向けた取り組みも進んでいる。一方、6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eを国内で利用するための検討作業も進んでいる。

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期待を集めるWi-Fi 6E、全面的な解禁にはハードルも

 ローカル5Gへの取り組みが進む一方で、高速大容量かつより低廉な無線通信技術として期待を集めているのが「Wi-Fi 6E」である。

 Wi-Fi 6Eは、既にPCやスマートフォンなどで利用されているWi-Fi 6と同じくIEEE 802.11ax規格で定められたものだ。最大伝送速度は9.6Gbps、無線通信方式はOFDMA(直交周波数分割多元接続)、変調方式は1024-QAMといったWi-Fi 6の特徴はそのままに、使用周波数に5925M〜7125MHzという6GHz帯が加わる点が異なる。

総務省による無線LANに関する周波数割り当て方針の概要
総務省による無線LANに関する周波数割り当て方針の概要。検討対象の6GHz帯はWi-Fi 6Eで利用することになる[クリックで拡大] 出所:総務省

 Wi-Fiで用いられている2.4GHz帯や5GHz帯は、使用されるデバイスの数の多さもあって、工場をはじめミッションクリティカルが求められるB2B用途において安定的な無線通信を確保できないことが多い。ローカル5Gに大きな期待が集まった背景には、地域は限定されるものの、サブ6やミリ波などの周波数帯を独占的に利用できる=安定的な無線通信を確保できることがあった。

 だからこそ、規格の仕様上ではWi-Fi 6が5Gと同等クラスの最大伝送速度を実現できるとしてもB2B用途での採用が広がらない原因にもなっていた。しかし、新たな周波数として6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eは、このWi-Fiに対する“つながらない”という評価を一変させる可能性がある。また帯域幅についても、2.4GHz帯が100MHz、5GHz帯が200MHzであるのに対して、Wi-Fi 6Eは最大1200MHzを利用できる点も大きな魅力の一つだ。

 既に、米国と韓国は5925M〜7125MHzの帯域を免許不要局利用(アンラインセンスバンド)として承認しており、欧州各国も検討を進めている。 日本国内では、総務省が2020年11月の周波数再編アクションプランに基づいて、2021年1月から検討を開始しており、2022年3月をめどに一部答申を出す予定だ。

各国の6GHz帯無線LANの検討状況
各国の6GHz帯無線LANの検討状況[クリックで拡大] 出所:総務省

 ただし6GHz帯では、放送事業用システムや固定衛星システム、固定無線システムなどが既に使われており、これらとの周波数共用が必要になってくる。そのためには、各無線デバイスが利用できる周波数帯や出力を調整するAFC(自動周波数調整)システムや、デバイスの電波の送信パワーをクラス分けする「デバイスクラス」などの実装が不可欠だ。

Wi-Fi 6Eとの周波数共用の検討が必要な既存システム
Wi-Fi 6Eとの周波数共用の検討が必要な既存システム[クリックで拡大] 出所:総務省

 Wi-Fi 6Eへの期待は大きいものの、対応端末は6GHzでの運用を可能にするさまざまなシステムの搭載が前提となるため、現行のWi-Fi製品ほど安価に購入できることは約束されていない。また国内で導入可能になる時期についても、6GHz帯を利用する既存システムのユーザーとの調整が難航する可能性もあり現時点では不透明だ。2022年内に、部分的な利用が解禁されても、Wi-Fi 6E利用の全面的な解禁にはもう少し時間がかかるとみられる。

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