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現実解を模索する導入3年目のローカル5G、Wi-Fi 6Eはダークホースになり得るかMONOist 2022年展望(2/3 ページ)

さまざまな事業主体が5Gを自営網として利用できるローカル5Gの国内導入が始まって2022年は3年目になる。4.6G〜4.9GHzの周波数帯を用いるサブ6とSA(Stand Alone)構成という組み合わせが現実解として主流になる中、導入コスト削減に向けた取り組みも進んでいる。一方、6GHz帯を用いるWi-Fi 6Eを国内で利用するための検討作業も進んでいる。

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富士通は初期導入費用を約3分の1に、AWSも市場参入

 当初からローカル5Gの課題として挙げられていたのが導入コストである。ローカル5Gの場合、設置した基地局を使って提供する通信サービスによって継続的に収入を得るキャリア5Gとは異なり、ローカル5Gを利用する企業や自治体にとって、そのコストに見合う価値を得られなければ導入する意味がない以上、そのコストの低減が強く求められるのは当然のことだ。

 既に導入コスト低減に向けた取り組みは幾つか出てきている。例えば富士通は、サブ6+SA構成に対応するローカル5Gソフトウェア基地局「FUJITSU Network PW300(以下、PW300)」のスターターキットの提供を2021年12月から始めた。PW300の5Gコア、5Gコアとのデータ送受信を担うCU(Centralized Unit)、ネットワークの監視制御を行うEMS(Element Management System)の3つの機能を仮想化によって1台のサーバ上に実装したシンプルな構成により、従来のPW300の標準構成と比べて初期導入費用を約3分の1に低減したという。2022年からは、このような形でローカル5Gのボリュームゾーンとなるサブ6+SA構成に特化した廉価なシステムが各社から投入されていくことになるだろう。

富士通の「PW300」スターターキットの構成
富士通の「PW300」スターターキットの構成。仮想化で1台のサーバ上に実装することで初期導入費用を約3分の1に低減した[クリックで拡大] 出所:富士通

 この他にも導入コストの低減では、AWS(Amazon Web Services)が2021年11月開催のユーザーイベント「AWS re:Invent 2021」で発表したローカル5Gの導入サービス「AWS Private 5G」が台風の目になる可能性が高い。AWSがローカル5Gの基地局やサーバ、5Gコア、SIMカードなどを提供し、ユーザーにとっては導入のための初期費用や通信デバイスごとのコストはかからず、必要とするネットワーク容量とスループットに対してのみ料金を支払うというビジネスモデルだ。現時点では米国内におけるプレビューにとどまっているが、ローカル5Gに注力しているNECがAWSと同年9月に企業向け5Gサービス領域での連携強化を発表しており、2022年には国内市場でのサービス展開が始まる可能性もある。

「AWS re:Invent 2021」の基調講演で「AWS Private 5G」を発表するAWS CEOのアダム・セリプスキー氏
「AWS re:Invent 2021」の基調講演で「AWS Private 5G」を発表するAWS CEOのアダム・セリプスキー氏[クリックで拡大] 出所:AWS

 2022年におけるローカル5Gの事業展開で注目を集めるのがソニーグループだろう。100%子会社のソニーワイヤレスコミュニケーションズが、一般ユーザーを対象に、ローカル5Gを利用した集合住宅向けインターネット接続サービス「NURO Wireless 5G」の提供を2022年春からスタートするのだ。

 ただし、ソニーのローカル5Gは一般ユーザー向けにとどまらず、B2B向けでもサービスを展開する予定だ。提供時期などは明らかになっていないが、ソニーグループが得意とするエンターテインメント領域や放送局向け機器の無線化などが例として挙がっている。もちろん、ローカル5G事業の知見やノウハウの蓄積が進めば、より市場の大きい工場向けなどへの展開も視野に入ってくるだろう。

ソニーワイヤレスコミュニケーションズのローカル5GサービスはB2B向けでも展開する予定
ソニーワイヤレスコミュニケーションズのローカル5GサービスはB2B向けでも展開する予定[クリックで拡大] 出所:ソニーワイヤレスコミュニケーションズ

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