コニカミノルタのディスプレイ用フィルムがジャンルトップを維持する秘訣:材料技術(2/2 ページ)
コニカミノルタが、新たな事業成長をけん引するインダストリー事業の一角をなす材料・コンポーネント事業について説明。ジャンルトップを維持するディスプレイ用フィルムや、モノづくりの高度化を可能にするインクジェットコンポーネントの強みなどを紹介した。
3つの強みでモノづくりのインクジェット化をけん引
電子部材を提供する機能材料事業に対して、IJコンポーネント事業はインクジェットによる印刷プロセスに必要なヘッドとインクを提供している。顧客はサイングラフィックスの印刷に用いる大判プリンタメーカー、商業印刷機を手掛ける大規模プリンタメーカー、プリント基板やディスプレイパネルの製造装置メーカーなどだ。なお、大規模プリンタメーカーのカテゴリーでは、コニカミノルタ自身が商業印刷機を展開しているためIJコンポーネント事業の社内ユーザーとなっている。
機能材料事業と同様にIJコンポーネント事業もサプライチェーンの上流に位置しており、顧客との関係性が重視することに変わりはない。強みになるのは、写真用をはじめさまざまなフィルムを手掛けてきたケミカルの力、カメラの開発で培った精密加工技術、そして工業分野で長年培った顧客対応力の3つである。これら3つの強みを発揮して、モノづくりのインクジェット化をけん引し、顧客のワークフロー変革を変革していくという。
例えば、プリント基板のソルダーマスク工程をIJ方式に置き換えることで、工程削減、コストダウン、作業改善などにつながる。全世界のプリント基板のソルダーマスク工程をIJ化した場合、材料コストを70%削減できるだけでなく、年間のVOC(揮発性有機化合物)使用量2万トン、工業廃水処理量2250万トンを削減し、環境規制への対応にも貢献できる。
今後の成長戦略としては、新たな機能性インクと工業向けヘッドの拡充によるアプリケーションの拡大、従来の印刷、塗布、蒸着、露光技術を利用しているユーザー向けにIJ置き換えに向けた顧客支援を推進していく。さらに将来的な展開として、ロボットと高機能IJヘッドの組み合わせによって立体印刷物領域に進出し、事業規模の大幅な拡大につなげていきたい考えだ。
検査、計測との融合でさらなる進化
コニカミノルタは2022年度を最終年度とする中期経営戦略「DX2022」を進めており、材料・コンポーネント事業の2021年度の売上高見通しは895億円となっている。事業進捗でも、機能材料、IJコンポーネントとも好調に推移している。そして、この好調な事業進捗を基に、2025年度を目標とする次期中期経営戦略に向けてさらなる進化を図りたい考えだ。
この進化で重要なのが、「検査、計測との融合による、高付加価値部材に加えたコアプロセスの提供」(葛原氏)である。レンズやピックアップなどの光学部材では、測定レシピの提供によって部材の状態が「見える化」される。ディスプレイ用フィルムでは、先述した通り品質データを管理、提供する「解析ソリューション」を通じて、モノづくりプロセスの革新に貢献する。そしてIJコンポーネントでは、検査との組み合わせによるリアルタイムフィードバックでオンデマンド生産の高度化を実現していく。
これら検査、計測との融合は、材料・コンポーネント事業の強みとしているサプライチェーンとの関係性をさらに深めて、その高度化や効率化にも貢献できるとしている。
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