オフィス事業から脱却するコニカミノルタ、画像IoTプラットフォームが成長基盤に:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
コニカミノルタが同社グループの中長期の経営戦略を説明。市場縮小が加速している複合機を中心としたオフィス事業について、デジタルソリューションを含めたデジタルワークプレイス事業への転換を進めるとともに、プロフェッショナルプリント事業、インダストリー事業、ヘルスケア事業を拡大させていく方針だ。
コニカミノルタは2020年11月26日、オンラインで会見を開き、同社グループの中長期の経営戦略を説明した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって市場の縮小が加速している複合機を中心としたオフィス事業について、オフィス向けのデジタルソリューションを含めたデジタルワークプレイス事業への転換を進めるとともに、計測、検査、診断が技術基盤となるプロフェッショナルプリント事業、インダストリー事業、ヘルスケア事業を拡大させていく方針だ。2020年度の全社営業利益はCOVID-19の影響もあって130億円の赤字を見込むが下期は黒字化しており、現在策定中の中期経営戦略「DX2022」の最終年度2022年度には全社営業利益を550億円まで伸ばす計画である。
同社は2020年10月に「コロナ禍で加速するコニカミノルタの事業について」と題した会見を開いており、COVID-19の影響を含めた今後の長期ビジョンとして、個々の「みたい」に応える「Imaging to the People」を掲げた。ここでいう「みたい」は、同社の祖業であるカメラやカメラ用フィルムなどと関わる「見たい」や、現行の事業と関わるような「看たい」「診たい」「視たい」「観たい」などになる。
コニカミノルタ 社長兼CEOの山名昌衛氏は「2030年の社会課題の洞察からバックキャストし、これから目指す姿として考え出したのがこの長期ビジョンだ。この長期ビジョンを基に、世界200万社とつながる当社の顧客基盤を通じて、画像IoT(モノのインターネット)プラットフォームを中核に『みたい』に応える顧客価値を提供していくというのが当社の新たな価値創造プロセスとなる」と語る。加えて、2050年を目標とする「エコビジョン2050」では、2030年に同社の顧客やサプライヤーなどのパートナーを巻き込む形でカーボンニュートラルを超えるカーボンマイナスを実現するとした。
中期経営戦略「DX2022」では全社営業利益550億円を目指す
2030年を見据えた長期ビジョンの中で最初の中期経営戦略となるのが、2020〜2022年度が対象の「DX2022」である。DX2022では、COVID-19によってもたらされる変容による脅威として、オフィス出社率低下によるプリントレスの加速を想定している。実際に2020年度上期のオフィス事業は大きな影響を受けている。「2021年度に向けていったん回復するものの、それでもCOVID-19前と比べて売り上げベースで9割程度までしか戻らないだろう」(同社)という。その一方で、非接触や分散、個別化といった新たなニーズは同社の中核技術となる“Imaging”にとって機会にもなるとしている。
COVID-19の影響が直撃した2020年度上期の全社営業利益は279億円の赤字となった。しかし同年度下期は149億円の黒字に回復する見込みであり、業績見通しに対して計画通りに進捗している。DX2022では、オフィス事業の営業利益を2018年度レベルまで回復させるとともに、2020年度の全社営業利益の黒字回復に大きく貢献した固定費削減のレベルを2021年度以降も維持する。そして、2021〜2022年度にかけて、前中計の「SHINKA2019」で注力してきた新規事業であるワークプレイスハブやバイオヘルスケアの収益改善を加速させる。2022年度にはオフィス事業に続く柱となる事業構築を加速させたい考えだ。
全社営業利益目標は2021年度が400億円、2022年度が550億円となる。なお、DX2022の正式な中期経営計画としての確定と発表は2021年春を予定している。
新規事業の課題を解決し成長に向けた基盤構築を完了
山名氏は前中計であるSHINKA2019の振り返りも行った。特に、今後の成長に大きな期待が掛かるワークプレイスハブやバイオヘルスケアについては幾つかの課題認識の基で、現時点では方針変更などによって成長に向けた準備が整ったとしている。
ワークプレイスハブについては、差別化のためLinuxベースの専用基本システムにこだわったが故に開発日程が遅延し、顧客への価値提供能力、デリバリー体制の構築にも時間を要した。ただし「月額課金は増加していたことから顧客価値には手応えを感じ、事業継続を決めた」(山名氏)という。現在は、Windowsベースの基本システムに変更することで、エッジとクラウドのハイブリッド利用のバランスが取れるとともに、顧客ニーズへの柔軟な対応力を確保できたという。顧客への価値提供能力とデリバリー体制についても基盤構築を完了したとしている。
バイオヘルスケアについては、遺伝子診断でAmbry、創薬支援でInvicroという2社の買収を行ったが、Ambryは事業拡大に向けた経営基盤の構築に時間を要する状況で、Invicroも脳中枢神経系のトーンダウンで売り上げの10%以上を喪失するなどの問題があった。現在は、Ambryは幹部入れ替えで経営基盤を強化しており、Invicroもアルツハイマー型認知症向けの新薬開発が再活性化するなど状況は好転しているという。山名氏は「両社合わせて既に275億円の売上高があり、今後は年率30%の成長が可能な市場ポテンシャルがある」と強調する。
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