コニカミノルタのディスプレイ用フィルムがジャンルトップを維持する秘訣:材料技術(1/2 ページ)
コニカミノルタが、新たな事業成長をけん引するインダストリー事業の一角をなす材料・コンポーネント事業について説明。ジャンルトップを維持するディスプレイ用フィルムや、モノづくりの高度化を可能にするインクジェットコンポーネントの強みなどを紹介した。
コニカミノルタは2021年12月21日、オンラインで会見を開き、新たな事業成長をけん引するインダストリー事業の一角をなす材料・コンポーネント事業について説明した。
同社は、現在の主力のオフィス事業をデジタルワークプレイス事業に転換するとともに、画像IoT(モノのインターネット)ソリューションやセンシング、インクジェット(IJ)コンポーネント、機能材料などから構成されるインダストリー事業によって新たな成長を目指している。今回の会見は、同月15日に行われた画像IoTソリューション事業の説明に続いて、IJコンポーネントと機能材料を手掛ける材料・コンポーネント事業がテーマとなった。
材料・コンポーネント事業の4つの特徴
コニカミノルタ 常務執行役 材料・コンポーネント事業本部長 兼 開発統括本部長の葛原憲康氏は、同事業の特徴について「広さ」「深さ」「柔軟性」「継続/反復性」の4つを挙げた。
まず「広さ」では、産業のデジタル化が進む中で、さらなる高度化が求められるリアルとデジタルをつなぐ「入力」と「出力」という広大な市場をターゲットとしている。入力ではカメラのレンズなどの光学部材やタッチパネルのフィルムを介してA-D(アナログーデジタル)変換が、出力では液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、紙などへの印刷によるプリントでD-A(デジタル−アナログ)変換が行われるが「A-D変換は適用領域の拡大、D-A変換は要求制度の劇的高度化により、さらに市場が拡大する」(葛原氏)という。
「深さ」「柔軟性」「継続/反復性」は、サプライチェーンとの関わりによるものだ。「深さ」では、原材料から高い付加価値を持つ加工品やコンポーネントという電子部材として提供することでサプライチェーン全体の価値向上を担う。「柔軟性」では、サプライチェーンの下流に当たるデバイスや製品に応じて、コニカミノルタの提供する電子部材の機能や姿を柔軟に変化させ、技術革新による顧客ワークフローの変革をもけん引する。そして、これらの電子部材が参入と認定までに1〜2年かかり、製品寿命も平均で5〜10年と長いことによって生まれる顧客との強固な関係を基に価値発揮を続けるのが「継続/反復性」となる。
ディスプレイ用フィルムは広幅化に対応、長尺化も図る
これら材料・コンポーネント事業のうち、位相差フィルムやTACフィルムなどのディスプレイ用フィルムを主力製品としているのが機能材料事業である。位相差フィルムでは液晶テレビ用保護フィルム一体型を、TACフィルムではノートPC向けの薄膜(40μm)やスマートフォン向けの超薄膜(20μm)で世界初の製品化を成し遂げており、出荷数量でもジャンルトップのポジションにある。
ディスプレイ用フィルムが関わるサプライチェーンでは、テレビやノートPC、スマートフォンを開発するセットメーカーが100社以上あるのに対し、ディスプレイパネルメーカーは20社、偏光板メーカーは10社と減少し、コニカミノルタが手掛けるフィルムメーカーは5社程度になる。このサプライチェーンの上流で、直接の顧客である偏光板メーカーとの関係を深めていくことが、同社の「深さ」「柔軟性」「継続/反復性」といった強みにつながっている。
実際に、ディスプレイを搭載する製品ははさまざまな形で進化を遂げているが、それらに用いられるディスプレイ用フィルムも変化してきた。この中でテレビ、ノートPC、スマートフォン、それぞれのジャンルトップを成し遂げているのは、ディスプレイパネルメーカーや偏光板メーカーとの関係性を基に、顧客のワークフロー変革に突き刺さる製品を提供してきたからだ。
この顧客のワークフロー変革に突き刺さる製品の一例となるのが、液晶テレビの大型化に対応した広幅フィルムの市場投入である。液晶テレビなどに搭載する大型ディスプレイ市場そのものは成熟期に入っており全体面積需要の伸びは緩やかだ。一方で、液晶テレビ用パネルの生産ラインは2020年を境に大きく変化した。2020年以前は、50インチサイズのパネル切り出しを前提としたG8工場が多く、そこで用いられる偏光板のサイズも2.0m幅までで、生産拠点も日本、台湾、韓国が中心だった。しかし2020年以降は、中国での新規投資によって立ち上げられた、65〜75インチサイズのパネルを切り出すG10.5工場が主流となり、求められる偏光板のサイズも2.3〜2.5mと広幅化した。そこでコニカミノルタは、1.3〜2.0m幅の位相差フィルムの製造に用いていた溶液流延方式に、オフライン幅加工を加えて2.3〜2.5mの広幅化を実現した。葛原氏は「従来の設備を生かしながら2.5m幅にも対応する柔軟なアプローチで対応した。溶液流延方式のポテンシャル、新たに加えた材料系などの特徴を組み合わせることで可能になった」と説明する。
また、広幅化だけでなく、納品するフィルムの長尺化によって、顧客のワークフロー変革やロス削減、コスト低減などの実現も図っている。フィルム製品は芯に巻いたロールの状態で納品されるが、巻くフィルムの長さを伸ばすほど梱包作業工数や輸送コスト、保管コストなどを低減することが可能になる。また、偏光板へのフィルム貼付工程でも、切替時間やつなぎ目のロスを削減できるようになる。さらに、コニカミノルタは、フィルム製造時の品質データを管理し、顧客に提供することで、偏光板メーカーの収率工場や検査工数の削減にも貢献していきたい考えだ。
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