浮遊状態で回転動作も可能に、“空飛ぶじゅうたん”が国内でも導入じわじわ:FAニュース
ベッコフオートメーションは、「新価値創造展2021」(2021年12月8〜10日、東京ビッグサイト)の特別展示として、“浮遊して運ぶ”リニア搬送システム「Xplanar」を紹介。同じ位置での回転動作を日本で初めて実演展示した。
ベッコフオートメーション(以下、ベッコフ)は、「新価値創造展2021」(2021年12月8〜10日、東京ビッグサイト)の特別展示として、“浮遊して運ぶ”リニア搬送システム「Xplanar」を紹介。同じ位置での回転動作を日本で初めて実演展示した。
ベッコフが開発した「XPlanar」は、電磁力により浮遊させた可動部を、平面タイルの上に浮かべて自由に動かすことが可能なリニア搬送システムである。高度な電気制御技術により、精密な位置決めを可能とし、複数の可動部をぶつからないように滑らかに動かすことができる。
浮遊する可動部は2Gの加速度、4m/sの速度、±50μmの精度で位置再現できる。基盤となる平面タイルは240×240×67mmで任意の形状に配置が可能。タイル内にはコイルと電子機器が組み込まれており、これらで発生する電磁力を制御することで可動部を動かす。可動部はXY軸方向だけでなく、5mmまでの持ち上げと下降機能なども持つ。液体などを載せた場合最大5度まで傾けることも可能だ。動作には精密な制御技術と高速ネットワーク技術が必要で、1Gbps、10Gbpsという高速、大容量通信に対応した産業用オープンネットワーク規格である「EtherCAT G」が活用されている。
また、ソフトウェアアップデートにより、従来は難しかった同一パネル上での回転動作を行えるようにした。「回転動作の実演は国内では初」(ベッコフ日本法人 代表取締役社長 川野俊充氏)。これにより薬品の攪拌動作などをパネル上で行えるようになるなど「新たな使い方も広がる」(川野氏)としている。
「Xplanar」は、ドイツでは2018年に発表されたが、日本では2020年末から市場投入を開始。スターターキットとして6つの平面タイルと4つの可動部、IPCやソフトウェアなどをセットで展開しており「現在、試験的に活用する動きが広がってきている」(川野氏)。現状では医薬品や半導体、食品などクリーン環境で搬送を行う業界からの関心が高いとし「ベルトコンベヤーなどメカによる搬送ではどうしても接触部の摩耗により不純物が発生して不具合になるケースなどもある。リニア搬送であれば、摩耗は発生しないためにクリーン環境を維持できる。これらの業界で『どのように使えるか』をさまざまな形で現在検証しているところだ」と川野氏は現状について述べる。
新たな用途を提案する中で、「Xplanar」へのさらなる要望として多いのが「精度」に関するものだ。「さらに精度を上げるにはどうしたらよいのかなど、新たな使い方のアイデアに合わせてさまざまな要望が出てきている。これらの要望への対応を製品開発にフィードバックしつつ、最適な用途を見いだしていきたい」と川野氏は語っている。
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