工場やオフィス、店舗などの効果的な換気対策を3D計測とリアルタイム解析で支援:CAEニュース
サイバネットシステムは、エリジオンの協力の下、室内の空気の流れをシミュレーション/可視化し、効果的な換気対策の実現を支援する「3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービス」の提供を開始した。
サイバネットシステムは2021年11月30日、3次元形状処理とデータ変換技術を得意とするエリジオンの協力の下、室内の空気の流れをシミュレーション/可視化し、効果的な換気対策の実現を支援する「3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービス」の提供を開始したことを発表した。
サーキュレーターやアクリル板の設置位置は本当に正しいか?
コロナ禍やポストコロナを見据えた社会・経済活動の本格的な再開に向けて、人が集まる商業施設やレジャー施設、職場環境などにおける感染防止対策の重要性が一段と高まっている。中でも、空調設備やサーキュレーター、アクリル板などを活用した室内の換気対策は、自治体からの助成対象(例:東京都「中小企業等による感染症対策助成事業」)となることから設置が進んでいる。
しかし、これら設備の最適な設置位置や向きなどに関する具体的な指標は示されておらず、想定する設置場所に機材などをレイアウトした場合、実際に効果的な換気が行われるかどうかの検証や判断を、各施設/店舗が自ら行うことは現実的とはいえない。
こうした背景を踏まえ、サイバネットシステムが新たに提供開始するのが、3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービスだ。工場、オフィス、レジャー施設、飲食店、スポーツジム、医療施設などでの利用を想定しており、サイバネットシステムが必要な機材を準備し、指定場所(対象の室内)を3Dスキャンして空気の流れをシミュレーション/可視化するとともに、その結果に基づき効果的な換気対策を提案する。
3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービスの流れ
3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービスの流れは、シミュレーションに必要な室内の3Dモデルの構築、サーキュレーターやアクリル板の効果検証、結果を踏まえた効果的な配置位置の提案の3段階に分けられる。
まず、指定場所となる室内を360度撮影が可能な3Dレーザースキャナーでスキャンし、取得した点群データから3Dモデルを構築する。3Dスキャン技術を活用することによって、図面のない施設でもシミュレーションに必要な室内の3Dモデルを容易に構築できる。
続いて、構築した室内の3Dモデルを基に、室内の人物が話す際に生じる飛沫、エアコンやサーキュレーターの風の流れを可視化し、アクリル板やサーキュレーターの位置や向きを変えながら複数回シミュレーションを実施する。
例えば、サーキュレーターの配置などの条件を変えた場合でも、わずか数秒で空気の流れが可視化され、その様子を動画で確認できるため、その場で(注1)さまざまな検証と対策が行える。
※注1:指定場所の面積や構造などによっては、3Dスキャンやデータの後処理に時間がかかるため、当日中の検討が難しい場合もある。その際、シミュレーションは別日程で実施する。
そして、得られたシミュレーション結果に基づき、サーキュレーターやアクリル板の効果的な配置位置の提案を行う。
エリジオンやAnsysのソフトウェアを活用
これまで、図面のない施設などを現地で計測しながら3Dモデルを作成することは容易ではなかった。しかし、同サービスでは、エリジオン製の3Dスキャナー/点群データ活用ソフトウェア「InfiPoints」による大規模点群データ処理や、Ansysのリアルタイムシミュレーションソフトウェア「Ansys Discovery」による数値流体解析(CFD)を用いることで、3Dモデルの構築およびシミュレーションをその場で実行することが可能になったという。
3Dシミュレーションによる室内換気対策支援サービスの提供価格(税別)は50万円からとなり、対象施設の面積や構造、立地などにより変動する。また、料金にはスタッフによる3Dスキャン撮影、データ後処理、シミュレーションの実施までが含まれている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 新型コロナの飛沫感染リスクをシミュレーションで検証
ANSYS(アンシス)は同社Webサイト内で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を抑制するための参考として、顧客およびパートナーによるシミュレーション結果を基にした洞察を公開した。 - ダッソー、くしゃみのシミュレーションを通じてフェイスシールド開発を支援
ダッソー・システムズのオープンイノベーションラボ「3DEXPERIENCE Lab」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の抑制に貢献すべく、“くしゃみのシミュレーション”を通じて、フェイスシールドの開発プロジェクトの支援を開始した。 - マスクの着用効果をCFDで解析、くしゃみをした際に液滴はどう飛散するか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に伴い、ソフトウェアクレイドルは、同社のCFD(数値流体力学)ソフトウェア「scFLOW」を用いて、くしゃみによる微粒子の飛距離が、防護なし、肘の内側による防護、マスクの着用でどのように変化するのかを解析し、その結果をレポートにまとめた。 - ダッソーが仏病院で流体シミュレーションを活用、新型コロナ感染リスクの低減へ
ダッソー・システムズは、世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に直面する中、パリ公立病院連合(AP-HP)に加盟するピティエ=サルペトリエール病院に対して、流体シミュレーション技術を活用した感染リスクの検証と安全対策の検討を行っていることを発表した。 - 焼肉店チェーンが3D飛沫可視化システムを導入、感染症対策の課題を明確化
ワタミは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、テックレボリューションが提供する「3D飛沫可視化システム」を導入した。建物内に浮遊する飛沫粒子の経路を可視化することで、感染症対策の課題を明確化する。 - 学校の安全な再開に向けて、シミュレーション技術で最適な換気や座席配置を検証
ダッソー・システムズは、コロナ禍における学校の安全な再開に向け、同社の「3DEXPERIENCEプラットフォーム」を基盤とするシミュレーション環境「SIMULIA」を活用し、より安全な教室環境の実現を支援する活動に取り組んだ。