2025年まではハードウェア中心で挑む三菱電機のFA部門、売上高8000億円以上へ:FAニュース(2/2 ページ)
三菱電機は2021年11月8日、重点成長事業の戦略説明会を開催。本稿では、その1つとなるFA制御システム事業本部の戦略について紹介する。
成長領域をつかみ、製造のインテリジェント化を支える
今後に向けては「新たな成長領域における技術革新の方向性と、製造のインテリジェント化の傾向は続くと見ている」(宮田氏)とし、これらを支援していく方針だ。当面は現在の強みであるシーケンサー、サーボ、CNCなどのハードウェア強化を進める一方で、機械メーカーなどとの装置の共創開発を強化し、パートナーとして顧客の技術革新に貢献していく。また、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、5Gおよび6G対応なども含めた製造のインテリジェント化に対応したソリューションの整備を進めていく。
「当面は半導体、ディスプレイ、EV、バッテリーなどの技術革新領域での製造能力強化の動きは続き、これらの領域で成長できる。2025年頃までは、既存のハードウェア、ソフトウェア、ソリューションが収益の中心になる。その後は製造現場でもAIや5G、6Gなどの技術が浸透してくると見ている。2025年以降に向けては、これらを活用したソリューションを生み出し、新たな成長ドライバーとしていく」と宮田氏は語っている。
具体的な今後の取り組みとしては「コアコンポーネント強化」「成長業種における提供価値拡大」「統合ソリューションの拡大」を進めていく。
コアコンポーネント強化では、シーケンサー、サーボ、CNCなどのハードウェアで高性能製品の開発と投入を進めていく動きだ。先進的な製品やアプリケーションの整備を進める他、性能と拡張性を備えた次世代シーケンサーの開発などにも取り組んでいるという。
成長業種に向けた提供価値拡大への取り組みとしては、EV、半導体、ディスプレイ、EMS、バッテリー、物流、データセンター、食品・飲料・医療を成長業種と定め、これらの業種に応じた価値提供を進めていく。業種別の営業体制を強化し、2021年4月にはグローバルでの業種別体制を支援する専門組織も設置。さらにグローバルでの共創ラボの拡充を図り、顧客企業との関係強化を進める方針だ。また、三菱電機全体の総合力を生かし、他分野の研究所との連携も進めていく。
統合ソリューションの強化については、スマートファクトリー化に向けて各機器やレイヤーを連携させる新たな枠組み作りに取り組む。エッジ領域での連携強化を進めていく他、製品ライフサイクルを総合的にカバーできるような仕組み作りに取り組んでいく方針だ。例えば、三菱電機では同社加工機のリモートサービスとして「iQ Care Remote 4U」を展開中だが、この基盤を顧客となる機械メーカーにも展開する計画だ。機械メーカーがリモートサービスを展開できるデジタル基盤「iQ Care Platform」として現在開発中だという。
「あくまでも強みはエッジ領域でここは三菱電機の強みとして独自で強化を進めていく。しかし、ライフサイクル全体などを考えた場合は、協調が必要となる。競争領域と協調領域を見極めて取り組んでいく」と宮田氏は考えを述べている。
これらの取り組みを進めることで、2025年度には売上高8000億円以上、営業利益率17%以上の実現を目指す。「2000年代は自動車や半導体、ディスプレイ関連投資で国内中心に成長してきた。2010年代はスマートフォン関連投資でアジア中心の成長となった。2020年代はデジタルや脱炭素などの技術革新や製造のインテリジェント化で大きく成長すると見ている。ただ、各フェーズにおいてリニアな右肩上がりで進むのではなく、成長領域で一気に投資が進む、階段状での成長となっている。これをしっかりと見極めていきたい」と宮田氏は語っている。
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