オムロンが協働ロボット事業強化、テックマンに出資し2024年度に売上高2〜3倍へ:協働ロボット(2/2 ページ)
オムロンは2021年10月26日、ロボット事業の強化に向け台湾の協働ロボットメーカーであるTechman Robot(以下、テックマン)に出資することを発表した。出資額はテックマンの全株式の約10%で、これによりオムロンの制御機器と一元的な制御が可能な新たな協働ロボットの共同開発を進め、2023年に発売する計画だ。
「ロボット統合コントローラー」で安全性と生産性を両立
具体的には、オムロンが展開するロボットと制御機器をまとめてコントロール可能な「ロボット統合コントローラー」で、制御可能なロボットの共同開発を進めていく。従来は製造現場において、ロボットと製造ライン設備は、別々のコントローラーを用意する必要があり、設備とロボットが連動して動く際の同期制御のプログラミングや調整が負荷となっていた。
オムロンの「ロボット統合コントローラー」はロボットの制御プログラムを1つ1つ読み解き、制御機器の制御プログラミングと照らし合わせて、プログラミング言語を統一することで、完全な一体制御を行えるようにしたものだ。同様の作業をテックマンの協働ロボットでも行い、ロボットとライン設備が連携して動くような工程を1つのコントローラーで制御できるようにする。2023年度には「ロボット統合コントローラー」で一元管理できる協働ロボットを発売する計画である。
これにより協働ロボットの課題であった安全性と生産性の両立を実現する他、システム全体とのすり合わせ制御を行えるようにし、ロボットシステム全体および製造ライン全体としての生産性を高める。また、1つのツールでコントロールできるために立ち上げ時間の短縮にもつなげることができる。「従来の協働ロボットは、結局は人と離れて使っていたり、設備と離れて使っていたり、真の協調作業は行えていなかった。これらを実現できるようにし、新たな価値を打ち出していく」と辻永氏は語る。
これらの取り組みにより2024年度のロボット事業(協働ロボット、モバイルロボット、産業用ロボット)の売り上げを600〜700億円とする計画だ。「2021年度のロボット事業の売り上げは開示できないが、2024年度までに2〜3倍にするということになる」(辻永氏)。
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