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村田製作所が工場に大規模蓄電池システムを導入、「自家消費型」再エネに本腰脱炭素(2/2 ページ)

村田製作所は、太陽光発電システムや同社製のリチウムイオン電池を用いた蓄電池システムを大規模に導入した生産子会社の金津村田製作所(福井県あわら市)を報道陣に公開。工場建屋や駐車場の屋根部にパネルを設置した太陽光発電システムの発電能力は638kW、北陸最大規模とする蓄電池システムの容量は913kWhに達する。

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「FIT型」から「自家消費型」へ

 これまで村田製作所の国内事業所で導入されてきた太陽光発電システムは発電を逆潮流して売電できる「FIT型」だった。一方、金津村田製作所の再生可能エネルギーシステムは、太陽光発電システムで発電した電力を全て自身で使い切る「自家消費型」となっている。

FIT型ではなく自家消費型の再エネ導入
FIT型ではなく自家消費型の再エネ導入[クリックで拡大] 出所:村田製作所

 北陸最大規模とする蓄電池システムは、太陽光発電システムからの余剰電力を充電しておき、朝や夜などにその電力を活用するための設備だ。村田製作所 新規事業推進部 シニアマネージャーの堤正臣氏は「自家消費型で電力をあふれさせず使い切るためには制御技術が重要になってくる。太陽光発電システムの発電変動と、幅広いプロダクトミックスを特徴とする金津村田製作所の消費電力の変動というダブルの変動を予測できる制御技術が必要だ。深層学習を用いて制御アルゴリズムを構築しており、運用によってデータが集まれば集まるほど精度を高められる」と強調する。

ダブルの変動を予測できる制御技術
ダブルの変動を予測できる制御技術[クリックで拡大] 出所:村田製作所

 また、蓄電池システムと制御技術の組み合わせにより、太陽光発電システム導入時に起こりがちな昼間の系統電力使用量の落ち込みや、夜明けや日没時に急激に系統電力使用量の急激な上昇を避ける系統安定化も可能になる。さらに、ソフトウェアによって再エネ効果の可視化が可能であり、発電状況をリアルタイムで把握するだけでなく、従業員の環境経営への参画意識付けなどにも役立てているという。

ソフトウェアによる再エネ効果の可視化
ソフトウェアによる再エネ効果の可視化 出所:村田製作所

 なお、蓄電池システムは、村田製作所の自社製品であるオリビン型リン酸鉄リチウムイオン電池「FORTELION」を用いている。金津村田製作所は、この電池セルを組み立てて製造する電池のサブモジュールや、サブモジュールを用いた一般消費者向けの蓄電池システムの生産を手掛けている。今回導入した蓄電池システムでは、26個のサブモジュールが組み込まれた電池盤32台を用いている。電池盤4台で蓄電池システムの1システム分となっており、8システムで運用されているという。電池セルの総数は約9万本に上る。

金津村田製作所の蓄電池システム
金津村田製作所の蓄電池システム。電池盤32台に約9万本の電池セルが組み込まれている[クリックで拡大] 出所:村田製作所

 リチウムイオン電池は低温や高温での運用が難しいとされるが、金津村田製作所では蓄電池システムを屋外に設置している。「FORTELIONは、正極材に三元系コバルト材料を使う一般的なリチウムイオン電池と比べて低温や高温での動作が可能なので屋外設置でも問題ない。この夏は電池盤の温度が40〜45℃まで上昇したが、50℃まで動作可能なので十分対応できた。低温側は0℃まで動作可能なので冬も十分対応できると考えている」(村田製作所の説明員)という。

 金津村田製作所は2022年度内をめどに、太陽光発電システムを増設するなどして発電量を倍増させる計画。これによって工場消費電力の27%を自家発電で賄えるようになる。同じく2022年度内には、金津村田製作所と同様の自家消費型の再生可能エネルギーシステムを国内の3工場に横展開する方針だ。中島氏は「自社導入の拡大に加えて、2022年後半には外販できるように事業化を進めていきたい」と述べている。

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