村田製作所がみなとみらいの研究開発拠点を公開「事業を広げる大きなチャンス」:研究開発の最前線(1/4 ページ)
村田製作所が神奈川県横浜市みなとみらい21地区に開業した研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を報道陣に公開。電池事業を中心としたエネルギー市場やヘルスケア市場において顧客や業界との接点強化を図るとともに、自動車市場でも新規分野での採用拡大に向けた活動を推進する拠点としての活用を見込む。
村田製作所は2020年12月15日、神奈川県横浜市みなとみらい21地区に開業した同社の研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を報道陣に公開した。同社の事業拠点としては関東地区で最大規模となり、特に電池事業を中心としたエネルギー市場やヘルスケア市場において顧客や業界との接点強化を図るとともに、自動車市場でも新規分野での採用拡大に向けた活動を推進する拠点としての活用を見込む。また、同社として初となる子供向け科学体験施設「Mulabo!(ムラーボ)」を開設するなど、新たな取り組みを進めるための拠点にもなっている。
同社 社長の中島規巨氏は「今回みなとみらいに進出することは、関東圏の一大開発拠点として村田製作所の事業を広げる大きなチャンスと捉えている。みなとみらいイノベーションセンターは、従来の事業ポートフォリオに加えて、新たな事業の創出や、自動車、エネルギー、ヘルスケアといった成長市場に注力するために設けた。エレクトロニクスを取り巻く環境は大きく変化しているが、われわれは技術者の好奇心を大切にしながら、新たな技術をみなとみらいから生み出すことで、未来を見据えた事業展開で市場の要請に応えていきたい」と語る。
関東地区での存在感を高めるとともに人材獲得でも期待
みなとみらいイノベーションセンターは、横浜駅東側に位置するみなとみらい21地区に建設された、地上18階、地下2階、塔屋1階のオフィスビルである。敷地面積は7414.88m2、延べ床面積は6万5335.35m2。着工は2018年5月、完成は2020年10月で、投資額は約400億円となっている(土地と建物費用のみ)。現在は約330人の従業員が働いているが、今後さまざまな機能の整備が進むことにより、2021年8月末には約850人が業務に従事することになる予定だ。
みなとみらい21地区には、日産自動車の本社や富士ゼロックスの横浜みなとみらい事業所がある他、直近では京急グループの本社、資生堂のグローバルイノベーションセンター、ソニーのカメラ部門を集約した拠点なども加わり、企業の研究開発拠点が集積しつつある。また、スタートアップ企業も多く存在し、隣接する湾岸地区には、みなとみらいイノベーションセンターの注力分野の1つであるヘルスケアと関わりの深い医療拠点や病院などもある。
みなとみらいイノベーションセンターは村田製作所の研究開発拠点として、既存事業から成長市場、新事業などを含めて広くカバーすることになる。中でも、電池を中心としたエネルギー、医療・ヘルスケア機器事業、IoT(モノのインターネット)、自動車向けでも新規採用となる分野に注力する方針である。電池関連では、神奈川県厚木市と福島県郡山市の拠点に分散しているソニーから買収したリチウムイオン電池事業の人員を同センターに集約する方針である。医療・ヘルスケア機器事業については、「当社は電子部品メーカーだが、医療・ヘルスケアにおける新たな市場を開拓するために最終製品も上市している。みなとみらいイノベーションセンターに、同事業に関連する人員を集約することでパートナーとの連携なども効率化していけるだろう」(村田製作所 取締役専務執行役員 技術・事業開発本部 本部長の岩坪浩氏)という。
また、好立地をてこに、客先、パートナー企業、研究機関など外部との連携強化にも活用していく方針である。さらに、横浜というブランド力のある国際都市に拠点を置くことにより、グローバル人材の獲得への貢献にも期待を寄せている。
村田製作所の事業所は、京都府長岡京市の本社の他、“研究開発の総本山”とする野洲事業所(滋賀県野洲市)、原材料開発拠点となる八日市事業所(滋賀県東近江市)など西日本を中心に展開している。東日本には、横浜市緑区の白山ハイテクパーク内に横浜事業所があるものの、野洲事業所と八日市事業所のブランチ(支店)としての役割が大きかった。岩坪氏は「関東地区で人材獲得しようとしても、有力な事業拠点がないこともあって知名度の点で後れを取っていたのが実情。今回、みなとみらいという好立地に研究開発拠点を設けることにより、村田製作所が東日本で事業展開を進める上でさまざまなインパクトが得られると思う」と強調する。
なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、現在の同センターの出社率は約50%程度になっているという。「テレワークの活用などは今後も進むと思うが、新事業につながるような最初の気付きを創出するには、社内メンバーと横連携したり、社外パートナーとしっかり話をしたりするためのリアルの場が必要だと考えている。そういった意味で、みなとみらいイノベーションセンターの果たす役割に大いに期待している」(岩坪氏)という。
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