村田製作所は全固体電池を2020年度中に量産へ、リチウムイオン電池も高出力化:組み込み開発ニュース
村田製作所はオンライン展示会「CEATEC 2020 ONLINE」に出展する電池関連製品について説明。全固体電池は開発が順調に進んでおり、2020年度中(2021年3月まで)の量産開始という当初計画に変更はない。また、円筒型リチウムイオン電池については、50〜60Aの大電流出力が可能な製品を開発しており2022年4月に投入する計画である。
村田製作所は2020年10月15日、オンラインで会見を開き、オンライン展示会「CEATEC 2020 ONLINE」(2020年10月20〜23日)に出展する電池関連製品について説明した。注目を集めている全固体電池は開発が順調に進んでおり、2020年度中(2021年3月まで)の量産開始という当初計画に変更はない。また、円筒型リチウムイオン電池については、50〜60Aの大電流出力が可能な製品を開発しており2022年4月に投入する計画である。【訂正あり】
【訂正】当初はオリビン型リン酸鉄を用いる円筒型リチウムイオン電池「FORTELION(フォルテリオン)」で大電流出力化を計画しているとしましたが、FORTELIONを含めた円筒型リチウムイオン電池全般の計画でした。これに合わせて記事本文を修正しました。
同社は、2019年10月開催の「CEATEC 2019」において、最大で25mAhの電流容量を持つ全固体電池を発表した。それまでに製品化されている全固体電池の電流容量は1mAh以下のものが多かったこともあり、大きな注目を集め、「CEATEC AWARD 2019」の経済産業大臣賞も受賞している。
会見では、全固体電池の製品展開として、高容量型と超小型の2種類で展開する方針を示した。特に、高容量型については、長さ5.6×幅9.6×厚さ4.5mmの場合に電流容量が10mAhになるという製品仕様を一例として示した。「全固体電池は表面実装可能だが、一般的な表面実装部品と同サイズの超小型はもちろん、高容量型も表面実装に対応する。電池は部品の一種とはいえ、これまでは他の部品と同じように取り扱うことはできなかった。全固体電池はコンデンサーと同様に部品として扱えるので、バッテリー搭載型製品の設計の仕方も変わっていくだろう」(村田製作所の担当者)。
また、50mWまでの出力特性を有していることからワイヤレスイヤフォンなどまで適用可能であり、さまざまなIoT(モノのインターネット)製品の可能性を広げられるという。動作温度範囲も高温が125℃まで広がるため、従来はリチウムイオン電池を適用できなかった環境でも展開できるとした。
一方、ソニーのリチウムイオン電池事業を継承した村田製作所の電池事業では、正極材にオリビン型リン酸鉄を採用し、長寿命と高い安全性を特徴とする円筒型リチウムイオン電池「FORTELION(フォルテリオン)」について、電池セル単体だけではなく、鉛バッテリーを代替するバッテリーモジュールや、電池盤、バッテリーシステムといった販売展開にも注力している。
また、現在開発中の円筒型リチウムイオン電池製品では、現行のハイパワー品で30〜40Aとなっている電流出力を、低抵抗化の技術にさらなる磨きをかけて50〜60Aまで高めることを目指している。これによって、小型エンジンを用いるような製品の電動化に対応していく考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- リチウムイオン電池を車載用にするための幾つものハードル、そして全固体電池へ
クルマのバッテリーといえば、かつては電圧12Vの補機バッテリーを指していました。しかし、ハイブリッドカーの登場と普及により、重い車体をモーターで走らせるために繰り返しの充放電が可能な高電圧の二次電池(駆動用バッテリー)の重要性が一気に高まりました。後編では、ニッケル水素バッテリーの欠点だったメモリ効果をクリアしたリチウムイオンバッテリーについて紹介します。 - 村田製作所とソニーの技術を融合、容量25mAhの全固体電池として昇華
村田製作所は、「CEATEC 2019」において、「業界最高水準の電池容量を持つ」(同社)とする全固体電池を披露。これまで製品化されている全固体電池の電流容量は1mAh以下のものが多いが、同社は最大で25mAhの電流容量を持つ製品の開発に成功。2020年度中の製品出荷を目指している。 - ソニーから譲り受けた村田のリチウムイオン電池、「燃えない」を武器に黒字化急ぐ
村田製作所は2019年8月28日、リチウムイオン電池の組み立て工程を担う東北村田製作所の郡山事業所を報道向けに公開した。 - 全固体電池はマテリアルズインフォマティクスで、変わるパナソニックの材料研究
マテリアルズインフォマティクスによって二次電池や太陽電池の材料開発で成果を上げつつあるのがパナソニック。同社 テクノロジーイノベーション本部の本部長を務める相澤将徒氏と、マテリアルズインフォマティクス関連の施策を担当する同本部 パイオニアリングリサーチセンター 所長の水野洋氏に話を聞いた。 - パナソニックやトヨタが世界トップクラス、電池・蓄電技術の特許活動レポート
欧州特許庁と国際エネルギー機関は現地時間で2020年9月22日、電池技術や蓄電技術に関する特許出願数の調査レポートを発表した。日本は全固体電池を含めたリチウムイオン電池関連の特許出願数で世界トップだった。また、電池技術の特許出願数を企業別に見ると、パナソニックやトヨタ自動車などの日本企業が多く並んだ。 - 全固体電池の硫化系固体電解質の実用化へ、出光興産が2021年から生産実証
出光興産は2020年2月18日、全固体電池向けの固体電解質の量産に向けて、実証用の生産設備を建設すると発表した。