村田製作所とソニーの技術を融合、容量25mAhの全固体電池として昇華:CEATEC 2019
村田製作所は、「CEATEC 2019」において、「業界最高水準の電池容量を持つ」(同社)とする全固体電池を披露。これまで製品化されている全固体電池の電流容量は1mAh以下のものが多いが、同社は最大で25mAhの電流容量を持つ製品の開発に成功。2020年度中の製品出荷を目指している。
村田製作所は、「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、幕張メッセ)において、「業界最高水準の電池容量を持つ」(同社)とする小型機器向け全固体電池を披露した。これまで製品化されている全固体電池の電流容量は1mAh以下のものが多いが、同社は最大で25mAhの電流容量を持つ製品の開発に成功。2020年度中の製品出荷を目指している。なお、同電池は同年10月14日に発表された「CEATEC AWARD 2019」で経済産業大臣賞を受賞した。
同社が開発した全固体電池は小型機器向けで、電解質に不燃性固体を使用しており、液体を用いる蓄電デバイスと異なり「安全、燃えない、漏れない」を特徴としている。また、表面実装にも対応しているので、他の半導体や電子部品と一体で組み立てることもできる。ウェアラブル端末やヒアラブル端末、各種IoT(モノのインターネット)機器など、リチウムイオン電池や電気二重層キャパシターではカバーできない範囲に最適な電池として提案する。
開発の背景には、2017年にソニーから譲り受けた電池事業との技術融合がある。「ソニー時代から続けてきた材料開発の技術と、村田製作所が持つセラミックス関連材料のプロセス技術の融合によって実現できた。これら2つの技術を併せ持つことを優位性として、さらに技術開発を進めて行きたい」(村田製作所の説明員)という。
今回展示した全固体電池の関連商品は「高容量型」「超小型」「ワイヤレス充電型全固体電池モジュール」の3種類。高容量型は、電流容量が2m〜25mAh、電圧が3.8V、外形寸法が長さ5〜10×幅5〜10×高さ2〜6mmで、ウェアラブル端末やヒアラブル端末などの小型機器向けの製品となる。超小型は、一般的な表面実装部品となる1005(長さ1.0×幅0.5mm)〜3225(長さ3.2×幅2.5mm)サイズで、電流容量は0.01m〜0.2mAh、電圧は1.6〜2.0V。「キャパシターとは異なる用途で、全固体電池ならではの特性を生かせると考えている。さまざまな顧客への提案に加えて、共同での用途開発も積極的に進めたい」(同説明員)。
ワイヤレス充電型全固体電池モジュールは、高容量型の全固体電池をウェアラブル端末やヒアラブル端末に搭載しやすくするためのレファレンスだ。25mAhの全固体電池と、充電IC、保護IC、スイッチングレギュレーターIC、ワイヤレス充電ICと一体化しており、外形寸法は5×11×10mmとなる。
動作温度範囲は−20〜60℃としているが「高温側についてはまだ余裕がある」(同説明員)。充電サイクル寿命についても数百〜1000回以上と、一般的なリチウムイオン電池と同等の性能を確保した。
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