工場長も隠蔽に加担した三菱電機の品質不正、3つの改革で膿を出し切れるか:品質不正問題(2/2 ページ)
三菱電機は、名古屋製作所 可児工場と長崎製作所で判明した品質不正の調査報告書を受けて、今後の同社の方針や再発防止策を含む「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組みについて説明。今回の取り組み発表に合わせて、同社 取締役会長の柵山正樹氏の退任も発表した。
社長直轄の品質改革推進本部を設立、製造拠点から分離・独立
三菱電機は、調査報告書による提言を受けて、品質不正の再発防止策を含む「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組みを進めていく。
品質風土改革では「本社主導の品質保証体制の構築」と「事業部横断の知見共有と機動的な支援」を目的として、2021年10月1日付で社長直轄組織の品質改革推進本部を設立した。従来は、生産システム本部直下の品質保証推進部と各製作所内の品質保証部が連携する体制だったが、品質保証推進部を格上げして品質改革推進本部とし、製作所内の品質保証部は品質改革推進本部のひも付きとなって、製作所に駐在する部署という位置付けに変える。品質保証に関する指揮命令系統を製造拠点から分離・独立させることで、品質保証部としてのけん制機能を確保したい考えだ。
2022年4月には、この品質改革推進本部を管掌する品質担当執行役員(CQO)を外部から招く。そして、量も質も足りなかったと調査報告書で指摘された品質保証体制を拡充すべく、IT化、デジタル化、インフラ整備などに必要な投資枠として2年間で300億円を確保した。
組織風土改革では、2021年10月に全社変革プロジェクト“チーム創生”を立ち上げる。社内公募により約40人を選抜し、従業員が抜本的な経営改革に参画し、内側から会社を生まれ変わらせるための取り組みとなる。また、「上に声を上げやすい」「失敗を許容する」「情報を共有しともに課題を解決する」といった組織風土を目指すとしている。2022年3月をめどに、重要で緊急度の高い“コアテーマ”を複数抽出し実行計画を策定する。併せて、閉鎖的な組織風土を打破する人事ローテーションや、ミドルマネジメントや現場のサポートを行えるような人事制度の刷新も進める。
ガバナンス改革では、経営監督機能強化に向けた取締役会の改革、取締役会や調査委員会とは別組織として、内部統制システムやガバナンス体制全般の検証と提言を行うガバナンスレビュー委員会を2022年3月をめどに設置する。
2021年7月28日に新社長に就任した漆間氏は「品質不正の問題は30年以上続いてきたことであり、一筋縄ではいかないだろう。しかし、今回全員が変革に向けたスタートラインに立ったことで、きっと変わっていくと考えている」と述べる。また、調査報告書では品質不正に取締役や役員の関与がなかったものの、課長以下の問題として“とかげの尻尾切り”にするのではないかという報道陣の指摘に対しては「現場のせいにするつもりは一切ない」と否定した。
また、現時点で1人を除き内部昇格者で占められる三菱電機の執行体制についても、2020年4月をめどに社外から3人程度の執行役員を招く方針を明らかにした。品質改革推進本部を管掌するCQOを外部から招くが「1人だけでは意見が通りにくい可能性もある。3人くらいは必要ではないかと考えている。また、将来的には執行役員の過半数を社外出身者にしたい」(漆間氏)とした。取締役会についても、2022年6月の株主総会で過半数を社外取締役にする方針だ。
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