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製造業DX推進のコツは、経営トップと現場に精通するリーダー社員の2段階でものづくり白書2021を読み解く(3)(5/5 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2021年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2021年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げる。

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中途採用と社員教育がデジタル化への近道

 デジタル技術活用企業とデジタル技術未活用企業ともに“ヒト”への投資に積極的に資源投入を行っていると先述したが、人材確保の基本である採用方針については、製造業全体でみると「新卒採用が中心」よりも「中途採用が中心」が多い。これをデジタル技術の活用有無別にみると、デジタル技術活用企業は「新卒採用が中心」が25.3%、「中途採用が中心」が47.3%となっているのに対し、デジタル技術未活用企業は、それぞれ、16.5%と59.3%となっている。製造業全体において、即戦力人材の確保が期待できる中途採用が主流であると考えられる中で、デジタル技術活用企業は、新卒採用にも力を入れていることがうかがえる(図19)。

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図19:現在のモノづくり人材の採用方針[クリックで拡大]出所:2021年版ものづくり白書

 足りない知見を補完する取り組みについて、デジタル技術活用企業においては「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」が最も多く、次いで「デジタル技術に精通した人材を中途採用する」となった。一方で、デジタル技術未活用企業では、「デジタル技術を活用しないので確保する必要はない」が半数近くを占め、「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」や「デジタル技術に精通した人材を中途採用する」の割合は、デジタル技術活用企業に比べ、大幅に低くなっており人材投資について消極的な傾向が出ている(図20)。また、デジタル技術活用企業では、中途採用によるデジタル技術に精通した外部人材の確保も行いつつ、主には、自社の社員へのデジタル技術に関する研修や教育訓練に注力して、人材の確保や育成を図っていることも読み取れる。

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図20:デジタル技術の活用に関するモノづくり人材の確保に向けた取り組み(複数回答)[クリックで拡大]出所:2021年版ものづくり白書

 本稿では、製造業がデジタル技術の導入・活用をするにあたっての課題や人材活用について見てきた。デジタル技術を活用している企業は結果として労働生産性が向上しており、幅広いモノづくり人材の育成や能力開発に向けた取り組みを行っている。一方で、製造業においては、依然として熟練技能が重要と考えられており、それぞれの作業工程や現場に合った形で熟練技能を引き続き大切にしつつ、デジタル技術の導入も両立していくことが重要となる。

 COVID-19の拡大により、社会や経済の不確実性が高まる中で、日本の製造業はデジタル化などの急速かつ広範な変化への対応を迫られている。これに対応するためには企業と労働者の双方が共同し、労働者の主体的な学びを後押ししつつ、社内全体での教育訓練を推進していくという人材育成や能力開発の取り組みを拡大・深化させていくことが重要だといえる。

⇒前回(第2回)はこちら
⇒本連載の目次はこちら

筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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