製造業がポストコロナで勝ち残るために最低限必要となる3つの視点:ものづくり白書2021を読み解く(2)(1/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2021年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2021年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げる。
2021年5月に公開された「令和2年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2021年版ものづくり白書)を読み解く本連載。第1回では、2021年版ものづくり白書の「第1章 日本のものづくり産業が直面する課題と展望」を中心に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響がどのように日本の製造業に及んでいるかを確認した。
第2回となる今回は、2021年版ものづくり白書においてポストコロナにおける「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げていく。
レジリエンス(サプライチェーンの強靭化)への取り組みとは
「レジリエンス(Resilience)」とは、もともとは物理学の世界で使われていた「弾力」や「回復力」を意味する英語であり、2021年版ものづくり白書では、ビジネスに何らかの影響を与えうる不測の事態からの復旧力という意味合いで使われている。
日本の製造業においては、サプライチェーンのグローバル化の進展と並行して、在庫を最小化して生産活動を効率化する生産方式が普及してきた。しかし、これは自然災害や都市災害が起きた際の生産活動の停止・停滞のリスクにもつながる。実際に2011年に発生した東日本大震災や、同年のタイの洪水、2016年の熊本地震などの自然災害を経て企業における危機意識は着実に向上し、事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)を策定する企業が増加している(図1、図2)。
加えて、経済産業省では「中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)」に基づき、中小企業が自社の防災や減災対策に関わる取り組みをまとめた「事業継続力強化計画」を経済産業大臣が認定するという制度を2019年に開始した。この計画の認定状況(2021年4月1日時点)を見ると、約2万4000件の認定件数の内、「製造業その他」が6割以上を占めるなど、危機意識の高まりと定着が着実に進んでいることが分かる(図3)。
一方で、調達先の広い範囲での把握や定期的な更新といったサプライチェーン全体を見渡した準備対応については依然として道半ばである。2021年版ものづくり白書では「サプライチェーン全体でのレジリエンス強化を進めていく上では、自社の直接の調達先だけでなく、さらにその先の調達先も含めたサプライチェーン構造を把握する必要がある」と述べているが、製品や部材を直接購入している調達先のみを把握しているという製造事業者は半数に上る。また、調達先の情報の定期更新を実施していない事業者も半数に上る(図4、図5)。
また、調達先の把握状況について、東日本大震災から「あまり変わらない」又は「むしろ後退している」企業は約6割に上る(図6)。
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