インフィニオンが300mmパワー半導体新工場を稼働、熱や水素を循環させCO2削減:工場ニュース
ドイツのインフィニオン テクノロジーズは2021年9月17日、オーストリア フィラッハの敷地内に薄型の300mmウエハーを使用したパワーエレクトロニクス向けチップの最先端工場を正式にオープンしたと発表した。投資額は16億ユーロ(約2057億円)。
ドイツのインフィニオン テクノロジーズは2021年9月17日、オーストリア フィラッハの敷地内に薄型の300mmウエハーを使用したパワーエレクトロニクス向けチップの最先端工場を正式にオープンしたと発表した。投資額は16億ユーロ(約2057億円)。
インフィニオン テクノロジーズでは、2018年にパワーエレクトロニクス用のチップ工場建設を発表。3年かけて準備を進め、工場は予定より3カ月早い2021年8月初めに稼働を開始した。最初のウエハーは9月中旬にフィラッハ工場から出荷され、チップは主に自動車、データセンター、太陽光と風力の再生エネルギー関連製品などの最終製品に使用される。
インフィニオン テクノロジーズの CEO であるラインハルト・プロス(Reinhard Plos)氏は「パワー半導体の世界的な需要の高まりを考えると、欧州における新たな生産能力を得るタイミングとしてこれ以上の時はない。デジタル化と電動化が加速する中、パワー半導体の需要は今後も伸び続けると予想される」とその意義について述べている。
新工場は延べ床面積が6万m2で、今後4〜5年かけて徐々に生産量を増やす計画である。工場建設においては、エネルギーバランスの改善をポイントとし、冷却システムの廃熱を利用したインテリジェントなリサイクルにより、敷地内の暖房需要の80%をカバーする。将来的には年間約2万トンのCO2を削減する。また、排気浄化システムを効果的に使い、直接排出量をほぼゼロにしている。
さらに、持続可能な生産と循環型経済の観点から、グリーン水素の生産とリサイクルを行う点が特徴である。生産工程で必要な水素は、2022年初めから再生可能なエネルギー源を活用し直接この工場で製造する。これにより、製造時と輸送時のCO2排出量を削減する。このグリーン水素は使用後にリサイクルし、公共交通機関のバスの燃料として使用する。
また、新工場では完全な自動化とデジタル化を実現している。「学習する工場」として、主に予知保全にAI(人工知能)によるアプローチを活用する。工場をネットワーク化することで、多数のデータとシミュレーションを活用し、メンテナンスのタイミングを早い時期に把握し計画的な保全を行えるようにしている。
さらに、インフィニオン テクノロジーズでは、ドレスデンとフィラッハの2カ所の300mm薄型ウエハー製造拠点において、同じ標準化された生産とデジタル化のコンセプトを採用。これにより、2つの拠点をネットワークで結び、製造オペレーションをあたかも1つの工場のようにコントロールする「バーチャルメガファクトリー」化を進めている。インフィニオン テクノロジーズのマネジメントボードメンバー、チーフオペレーションズオフィサー(COO)であるヨッヘン・ハネベック(Jochen Hanebeck)氏は「生産性の向上に加え、生産の柔軟性を生み出すことができるようになる。異なる製品の生産量を拠点間で素早く調整し、顧客ニーズに迅速に対応できるようにする」と語っている。
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