ナノスケールのちりの影響を抑制、半導体製造装置が目指すIoT活用:製造業IoT
「SEMICON Japan 2016」のIoTイノベーションフォーラムで登壇した東京エレクトロン執行役員の西垣寿彦氏は、半導体製造における“ちり”の管理と、IoTを使った生産性向上の取り組みについて紹介した。
エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2016」(12月14〜16日、東京ビッグサイト)のIoTイノベーションフォーラムで登壇した東京エレクトロン執行役員の西垣寿彦氏は「プロセス・装置インテリジェンス制御による製造革新」をテーマに講演。エッチング装置、成膜装置、洗浄装置など幅広い半導体製造に関する製品群の基盤となる「ディフェクト(欠陥)コントロール」を紹介するとともに、IoT(モノのインターネット)を使った生産性向上への取り組みを紹介した。
実生産時間をいかに増やすか
半導体の需要は年々高まり、ゲーム機から医療機器、自動車などさまざまな分野で多くの半導体が使われるようになっている。アプリケーションも急速に広がりを見せる。それは半導体デバイスが高機能化するとともに、微細化によりチップ1個当たりや機能単位でのコストが低下し、幅広い産業界で使われるようになったことによる。「自動車などで大量に半導体に採用されるのも価格低下が最も大きな要因である」と西垣氏は述べている。
ただ、こうした傾向も変局の時を迎えつつある。高機能化については、メモリやロジックでも進化が続いているが、微細化については限界が見え始めているからだ。チップ単価、機能単価の低下については生産性(どれだけの量を生産できるか、単位時間にウエハーをどれだけ処理できるか)と、処理したウエハーの中にどれだけの良品があるか(歩留まりコントロール)の掛け算となる。
ツールの生産量はウエハー/時間など「その製造装置が安定的に生産に寄与できるか」という点や「実生産時間がどれだけ確保できるか」という点が重要になる。生産性については、プロセスの安定性を定期にチェックしたり、予定外のメンテナンスがどの程度の頻度で起こったりするか(装置がダウンしている時間がどのくらいだったか)が判断材料となる。
課題となるパーティクルの抑制
そこでの課題の1つが、パーティクルの発生をどこまで抑えられるかということだ。「パーティクルコントロールは、まず対象を理解して、モニタリングをしながらウエハー上に付着することを阻止することが必要だ。さらに、もし付着したらそれをどうやって取り除くかを考えなければならない。これらを含めた装置コントロールということになる」と西垣氏は語る。
ここで取り組むべき対象となるパーティクルのサイズはナノメートル単位と微少なサイズだ。ウエハーを処理している時にはウエハー上にパーティクルは付着しない。ウエハーを導入するための搬送エリアとプロセスエリアの間の仕切り(バルブ)を開ける際の気圧の影響で風が発生し、パーティクルが舞い上がって付着するのだ。
ここで大事なのはバルブを開けるときに、衝撃波が生じないように静かに開閉することだ。次にパーティクルを肉眼で見えるようにするためには、UVライトを当てチェックを行う。また、装置としてはISPM(In Situ Particle Monitor)を、排気の途中に設けることにより、装置内のパーティクルがどれだけの数があり、どう流れているかが見える。
ウエハー上に付着しているパーティクルについては、光を当てその散乱を見る。それでも数ナノメートルのものは見えにくいため、ALD-Ox Film Depositionを装着することにより、見かけを大きくしてパーティクルの状況を確認する。
ウエハー上に付着しないようにするためには、プロセス後にパーティクルを取り除くことが重要だ。取り除くには、気圧を高めて、押し出す力(粘性流)を強める技術を開発している。それでもパーティクルが付着してしまった場合は、従来は洗浄処理で取り除いていた。しかし、半導体の構造がより複雑になっているため、洗った後の乾燥工程で、表面張力によりパターンへのダメージが起きることがある。東京エレクトロンのサーフェスプレパレーション装置ANTALESはガスを低温エアロゾル化し、細かい粒子にしてウエハーに吹き付けることによりナノスケールパーティクルをデバイスへのダメージが少なく除去が可能だとしている。
IoT活用でパーティクル管理を高度化
西垣氏は「今後さらに高性能な製造装置を製造し、提供していくために、IoTの技術を製造装置の進化に使いたい」と語っている。装置の状況を自己診断し、さまざまなプロセスをAI(人工知能)などにより最適化し自己コントロールするアプリケーションを開発する方針である。それにより安定性の高い稼働や、定期的ではなく必要に応じて装置を止めてメンテナンスをすることで、より高い生産性につながる。こうしたことを通じて装置の可用性を高めていく。
さらにIoTの通信能力を利用し、ユーザーの装置の状況をモニタリングして、装置のサポート体制を高めていく。「IoTでのセキュリティ能力が高まっているため、こうした取り組みも可能性が高まっている」と西垣氏は今後の取り組みについて述べている。
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