エッジの先の先、センサーデバイスから見たIoTの風景:製造業IoT(1/2 ページ)
「SEMICON Japan 2016」のIoTイノベーションフォーラムで登壇した米国アナログ半導体大手であるアナログ・デバイセズIoT戦略担当ディレクタのジェイソン・リンチ氏は、IoTで成功するためにはハードウェアや半導体技術の大きな革新や協業が必要だと考えを述べた。
エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2016」(2016年12月14〜16日、東京ビッグサイト)のIoTイノベーションフォーラムで登壇した米国アナログ半導体大手であるアナログ・デバイセズIoT戦略担当ディレクタのジェイソン・リンチ(Jason Lynch)氏は「IoTがもたらす変革を、われわれはどう見るのか」をテーマに講演。IoT(モノのインターネット)で成功するためには、ハードウェアや半導体技術の大きなイノベーションやコラボレーションの取り組みが必要との考えを述べた。
IoTでセンサーメーカーが果たす役割
IoTはIT革新の第3の波といわれている。第1の波はメインフレームからサーバへの移行などのコンピューティングの波だ。第2の波がラップトップPCやタブレット端末などモバイルコンピューティングの波である。そして第3の波がIoTだ。「アナログ・デバイセズでは1、2番目の波で果たす役割はそれほど大きくなかった。ただ、IoTでは中心となる企業になれると考えている」とリンチ氏は強調する。さらに「当社はリアルの世界とデジタルの世界のインタフェースの部分に位置している。光、マイクロ波、温度までさまざまなセンサーを持ち、それらの製品が重要な役割を果たすと考えている」と自信を見せた。
その役割の一つが、ノードでのインテリジェンスという考え方だ。これはインテリジェンスをネットワークのエッジ部分に持たせるというものである。現状ではエッジで得られたほとんどのデータはクラウドにそのまま単純に送ることが想定されている。安価なセンサーを使って、単純にデータを集めて、それをクラウドに上げればいいという考え方だ。
しかし、インターネットに接続できるデバイスの数が、2020年には500億台まで増えると予想される中で、そのデバイス全てがクラウドと通信をするというのは効率が悪い。そこには帯域幅の問題もあり、さらに、電力の問題もある。データを常にクラウドに挙げるのは現実的ではない。エッジの領域にインテリジェンスを持たせ、必要な場合だけクラウドにデータを送るという方が現実的である。
「狭義のセンシング」から「広義のセンシング」へ
ただ、こうしたセンサー領域にインテリジェンスを持たせる世界を実現するには、さらなるイノベーションや、機器メーカーとのコラボレーションが必要となる。リンチ氏はこのビジョンを「IoTスマートパーティショニング」という考え方だと説明する。エッジからクラウドに至るまでを全て最適化することでベストな形を作り、IoTで描く価値を現実のものにしていくというものだ。
解決すべき課題として直面することになるのが「チップスケールセンシング」だとリンチ氏は指摘する。現在のセンサーを使ったセンシングは「狭義のセンシング」である。センサーができることを狭く捉えているが、さまざまなタイプのセンサーを他のマイクロプロセッサと同じようにチップ上に乗せることができれば、従来以上にさまざまな機能を担わせることが可能となる。また、今後重要になる技術としてセキュリティを挙げる。アナログ・デバイセズではセキュリティをセンサーレベルにままで落とし込んでいくことも計画しているという。
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