エッジの先の先、センサーデバイスから見たIoTの風景:製造業IoT(2/2 ページ)
「SEMICON Japan 2016」のIoTイノベーションフォーラムで登壇した米国アナログ半導体大手であるアナログ・デバイセズIoT戦略担当ディレクタのジェイソン・リンチ氏は、IoTで成功するためにはハードウェアや半導体技術の大きな革新や協業が必要だと考えを述べた。
IoTに求められるアプリケーションの重要性
IoTの世界を広げていくためには、IoTがさまざまな分野に適応していくためのアプリケーションも重要となる。スマートファクトリーについて、同社はアイルランドの工場で実証を行っている。MEMSベースの加速度センサーを使って、振動の解析を行い回転機の寿命を予測している。「投資は当初は12カ月で回収できると予想していたが、9カ月の短期で回収することできた。これからもIoTが現実のものとなり、ROIを生み出すことが可能だということを示している」(リンチ氏)。
また、スマートシティ向けのアプリケーションとしては、スマートパーキングの空きスペースの物体検出などがある。同社ではドライバーが駐車時に感じるフラストレーションを軽減する、費用対効果に優れたスマート・モニタリング・システムを2016年5月に発表した。同システムは高額のインフラを追加することなく、路上や屋内の駐車スペースの占有状況を監視することで、ドライバーが駐車スペースを探す時間を短縮し、駐車を容易にする。このスマート・システムは、BLIP(Blackfin Low Power Imaging Platform)により実現した。BLIPは低コスト・低消費電力の組み込みコンピュータビジョンプラットフォームであり、幅広いリアルタイム検知アプリケーションに適している。
この他、同社ではビジョンセンシング(視覚検知)技術を専門とするスイスのSNAP Sensor SAを買収した。SNAP Sensorの特許技術により、光センサーの性能が既存製品に比べ大幅に改善され、過酷な照明環境下でも正確に画像を検知する。さらに、ほぼ全ての画像処理をセンサー上で行うため、プロセッサへの負担が減り、低価格で低消費電力のプロセッサであっても対応可能になるとしている。物質センシングでは、イスラエルのConsumer Physicsと、食品、植物、薬品、化学物質、人体、その他さまざまな物質を包含する液体及び固体の分析を可能にする、個人および産業向け「センサーTOクラウド」型IoTプラットフォームを共同開発すると発表。IoT時代に最適なセンシングポートフォリオの構築に取り組んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「エッジノードはより軽く」、坂村氏がIoTのアグリゲートモデルを提唱
環境とエネルギーの総合展示会「エコプロ2016」の特別講演に東京大学大学院教授の坂村健氏が登壇。「サステナブル社会を実現するIoT」をテーマに、同氏が研究を進めているTRONとIoTの関係などを紹介した。 - アナログからデジタルへ、センサーの値をA/D変換して取得しよう!
マイクロマウスの市販組み立てキットを完成させた北上くんとえみちゃん。サンプルのソースコードに頼らず、オリジナルプログラムをイチから組もうと奮闘中。今回は、“壁の有無”や“壁までの距離”を検知する「センサー」の値を取得する方法についてだ。 - 「どのデバイスが最適か?」――モーションセンサー3機種を徹底比較!!
数あるモーションセンサーデバイスの中から「Kinect for Windows」「Creative Senz3D/Intel Perceptual Computing」「LEAP Motion」の3つを取り上げ、各デバイスの機能や特徴を、ハードウェア/ソフトウェアの両面から比較する。また、開発者向けに提供が開始された「Kinect for Windows V2」についても紹介する。 - 2020年に自動車1台当たり19個載るイメージセンサー、裏面照射型が鍵を握る
車載CMOSセンサーで50%近いシェアを握るオン・セミコンダクターによれば、2019〜2020年には自動車1台当たりに19個のイメージセンサーが搭載されるようになるという。同社は、成長著しい車載CMOSセンサー市場での優位を確保すべく、裏面照射型の新製品を投入する。 - デンソーがソニー製イメージセンサーを採用、夜間の歩行者検知が可能に
デンソーは、運転支援システムなどに用いられる車載用画像センサーにソニー製イメージセンサーを採用することで、夜間の歩行者認識が可能になったと発表した。 - Blackfin、“柔軟性”によるマルチプラットフォーム戦略で差別化
デジタルAV機器の隆盛に歩調を合わせ、アナログ・デバイセズはDSPファミリ「Blackfin」を成長させてきた。マルチフォーマットでリッチなAVコンテンツがデバイス間を行き交う時代に入り、DSPへの性能要求は増す。それでも、Blackfinの本領であるプログラマブル性を徹底して維持し、柔軟性と高性能の両立を図っていく考えだ。