「Armadillo-IoT」がエッジAIに対応、専用Linux「Armadillo Base OS」も開発:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
アットマークテクノがエッジAI処理に対応したIoTゲートウェイの新製品「Armadillo-IoTゲートウェイ G4」とIoT機器向けに新たに開発したOS「Armadillo Base OS」を発表。Armadillo-IoTゲートウェイ G4の開発セットの価格(税込み)は4万9500円で、2021年11月末に発売する予定だ。
汎用LinuxディストリビューションはIoTゲートウェイに最適なのか
今回、Armadillo-IoT G4に合わせて投入するのが、IoTゲートウェイ向けに開発したArmadillo Base OSである。アットマークテクノではArmadillo向けに「atmark-dist」という組み込み機器向けの独自Linuxディストリビューションを標準OSとして提供していたが、IoTゲートウェイとしての利用が広がる中で近年は汎用Linuxディストリビューションである「Debian」が標準OSになっていた。
實吉氏は「しかし、汎用LinuxディストリビューションであるDebianやUbuntuがIoTゲートウェイに最適かと言うとそうではない。IoT機器は長期運用が求められることも多く、ストレージはeMMCなどのNADNフラッシュメモリが一般的なので書き換え回数や容量に制限がある。何より、IoT機器それぞれで使われ方が違っており個体ごとに環境が異なる」と指摘する。汎用Linuxディストリビューションは、OSサポート期間や容量、アップデート、アクセス権限など、さまざま点でIoT機器での利用が想定されていないのだ。
そこで、IoT機器向けを志向するArmadillo Base OSは、堅牢化の向上、利便性の向上、長期運用への対応を目的に開発が進められた。まずLinuxカーネルは、小容量を特徴とする「Alpine Linux」をベースに構築し長期メンテナンスへの対応を図っている。一方、さまざまな用途が想定されるIoT機器のアプリケーションを開発できるように、ITシステムの開発で広く利用されているコンテナに対応。コンテナエンジンは「podman」を採用しており、コンテナとして「Docker Hub」のarm64v8向けイメージを利用できるようになっている。
また、OSのソフトウェアアップデートは、コンテナによるアプリケーション層と分離してあるOSとブートローダーを2面化することで、機器の動作を停止することなくアップデートを行える仕組みを用意した。セキュリティについても、OSとアプリケーション層の間でアクセス制限を行うことで空間分離を行い、ソフトウェアの脆弱性による影響を限定するようになっている。デバイス認証用にセキュアエレメントも用意した。
現時点で、Armadillo Base OSがサポートする機器はArmadillo-IoT G4に限られる。ただし「Armadillo-640/X1」「Armadillo-IoT G3/G3Lについては、メモリ容量や性能を検証した上で利用に向けた対応を検討するとしている。
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