製品と設備情報をひも付けてグローバル管理、マブチモーターのPLM導入事例:製造IT導入事例
PTCは2021年8月31日に、同社のPLM製品「Windchill」のユーザー事例などを紹介する「PLM Virtual Conference 2021」をオンラインで開催した。本稿では日鉄ソリューションズによるマブチモーターへのWindchill導入事例を抜粋して紹介する。
PTCは2021年8月31日に、同社のPLM(Product Lifecycle Management)製品「Windchill」のユーザー事例などを紹介する「PLM Virtual Conference 2021」をオンラインで開催した。本稿では日鉄ソリューションズによるマブチモーターへのWindchill導入事例を抜粋して紹介する。
紙ベースの情報管理から脱却
現在、自動車部品メーカーはグローバル化に伴う市場競争の激化によって、より厳しいQCD(Quality、Cost、Delivery)が要求されている他、競争力の高い新製品や新規事業の立ち上げなどが求められている状況だ。これらの取り組みを進める上では、変化に強いデジタル基盤の整備が重要とされている。
しかし、実際には基盤整備がうまく進まないメーカーも多い。部門のシステム間で情報分断が生じており情報収集に手間が掛かる、既存システムが部門最適化されており変化への柔軟な対応が難しい、といった課題を抱えているためだ。マブチモーターも類似の課題を抱えていたが、これらに加えて製品情報の管理が紙ベースのため業務品質やスピードを向上させにくい、品質マネジメントシステムの国際規格「TS16949」に基づいたコントロールプラン作成が拠点や人ごとに品質がばらばらであるという問題も抱えていた。
製品情報と設備情報をひも付けて管理
そこで同社は日鉄ソリューションズの支援の下、Windchillを中核に設計/生産に関わる各種情報を互いにひも付けてデジタル化、一元管理するソリューション群を導入した。具体的にはBOM(Bill of Materials)やBOP(Bill of Process)、BOR(Bill of Resource)、3D-CADデータなどの製品情報と、生産設備の3D-CADデータ、BOM、その他工場で使用する消耗品などの設備情報を互いにひも付けた上で、Windchill上での管理する基盤を構築した。これらの情報に拠点側が一部手入力した情報を加えることで、コントロールプランが半自動的に生成される設計となっている。
情報管理はマブチモーターの国内拠点で行い、海外拠点はこれらの情報を参照して製造するという業務設計を行った。これによって各拠点での品質のばらつきを防ぐ。日鉄ソリューションズ 産業ソリューション事業本部 産業ソリューション第二事業部の須藤邦海氏は「従来はメーカーの監査が入ると判明してから、コントロールプランの形式を整えるなどの作業を行っていた部分もある。Windchillの導入によってこうした手間を省力化することができた」と語った。
また、Windchillで管理する情報自体は設計/生産に関わるもので、営業担当者による商談や購買調達、製造などはスコープ外となっているが、須藤氏は「商談の場面において設計/生産技術者の検討結果を参照しながら営業担当者が顧客とやりとりを行う、また工場担当者がタブレット端末などで情報を参照しながらモノづくりを行えるなど、各役割の担当者が業務を効率化できる環境を整備した」と語る。
今後、マブチモーターではWindchillを中核とする情報基盤をDX(デジタルトランスフォーメーション)基盤として利用することで、さらに高度なデータ活用や、他システムとの連携などを進めていく計画だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ⇒連載「モノづくり革新のためのPLMと原価企画」のバックナンバーはこちら
- PLM的な情報管理なんて実現しない?
製品ライフサイクル全体を管理するためにはPLMを基軸としたシステム作りが急務。PLM導入・改善プロジェクトを担当する際に事前に知っておくべき話題を、毎回さまざまな切り口から紹介していきます。 - PLM雌伏の10年、これからは飛躍の10年となるか
2000年代前半から製造ITツール業界で話題になり始めた「PLM」。しかし、MONOistが2007年に開設してからこの10年間、PLMの実際の運用状況はPDMの延長線にすぎなかったかもしれない。しかし、IoTの登場により、PLMは真の価値を生み出す段階に入りつつある。 - PLMはTime to MarketからTime to Profit
日本にPLMを紹介する先駆けとなった書籍「CRM、SCMに続く新経営手法 PLM入門」(2003年刊)を執筆したアビーム コンサルティングの執筆チームが、その後のPLMを取り巻く環境変化と今後のあるべき姿について、最新事例に基づいた解説を行う。 - 規模の経済から“速度”の経済へ、PLM新世代
日本にPLMを紹介する先駆けとなった書籍「CRM、SCMに続く新経営手法 PLM入門」(2003年刊)を執筆したアビーム コンサルティングの執筆チームが、その後のPLMを取り巻く環境変化と今後のあるべき姿について、最新事例に基づいた解説を行う。 - 「PLMを考え直すときが来た」
アラスジャパンはユーザーイベント「Arasコミュニティイベント(ACE)2015 Japan」(2015年9月2〜3日に)を開催。同イベントではアラスジャパンの社長を務める久次昌彦氏が登壇し、昨今の製品開発を取り巻く環境変化とそれに向けた同社のPLM製品の展開方針について語った。