PLM的な情報管理なんて実現しない?:PLM導入プロジェクト、検討前に読むコラム(4)(1/2 ページ)
製品ライフサイクル全体を管理するためにはPLMを基軸としたシステム作りが急務。PLM導入・改善プロジェクトを担当する際に事前に知っておくべき話題を、毎回さまざまな切り口から紹介していきます。
結局はPDM止まり、PLMシステムは夢物語か?
設計部門に「現在どのようなシステムが導入されていますか?」と聞くと、多くのお客さまから「うちではPLMシステムを買ったけれどもCADデータ管理程度にしか使えておらず、結局はPDMシステム止まりです」という返事をよく聞きます。
PLMシステムというカテゴリのソフトウェアが日本市場に登場して約20年たちますが、なぜPLMシステムの導入まで進まない企業が多いのでしょうか?
今回は「なぜPDMシステムは構築できるのにPLMシステムが構築できないのか?」という点を解説するとともに、「PLMシステムを構築するために必要な要件」を明らかにしていきたいと思います。
PLMシステムの特徴をいま一度確認
PLMシステムとPDMシステムとでは、いったい何が異なるのでしょうか? まずは下の表で整理してみましょう。
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表を基に解説すると、PLMシステムとは、製品のライフサイクルにわたるさまざまな情報を、相互に関連付けて、統合して管理し、業務に必要な製品情報を、必要とする人に、正しい情報を、提供するシステムといえます。
片やPDM(Product Data Management)システムとは、設計時に作成される、CADデータやBOM情報を、一元管理し、複数の人と、データを共有することで、コンカレントに、設計作業を実現するシステムといえます。
ここでいうPDMのプロダクトデータとは、多くの場合CADデータのことを指しています。
このように定義すると一見PLMシステムとPDMシステムはよく似ていますが、2つの点で大きく異なる特徴があります。
1つはPLMシステムで管理されるデータは、「プロダクトのライフサイクルで発生するさまざまな種類のデータが管理対象」となっているのに対し、PDMシステムで管理するデータは「CADデータや一部のドキュメントファイル」といった限定されたデータだけを管理しています。
2つ目はPLMシステムは「業務に必要なデータを必要な形で提供している」のに対し、PDMシステムでは主に設計(もっと限定すると図面作成)業務に必要なデータのみを提供できればよいといった違いがあります。
このように定義してみるとPLMシステムとPDMシステムの違いがよく分かると思います。
PLMシステム運用のハードルが高くなる理由
PDMシステムは図面として作成されるCADデータを共有できるシステムとして構築できればよいため、比較的用途も明確でパッケージ化されたシステムをそのまま導入することも可能です。
しかし、PLMシステムの場合は「統合管理されている製品データを業務に合わせて提供する」ということを実現しなければいけません。
データを統合管理するということは比較的ITの得意な分野で実現することはそう難しくないのですが、この統合管理されているデータを“業務に合わせて”提供することがPLMシステム実現のハードルを高くしているといえます。
またPLMシステムは特定の部門だけで使われるのではなく、PLMシステムで管理されているデータは多くの部門で共有されるとともに、業務によって異なる活用のされ方をします。
さまざまな部門でデータを見ることは、統合管理されているデータをそのまま見せるのではなく、作業のフェイズやタイミングに応じて見えるデータをコントロールしないと、欲しいデータを欲しい人が欲しい形で入手することができません。
このように、使う部門ごとに異なる個別の要件をシステムに反映することが必要な点が、PLMシステムの導入を難しくしているポイントです。
筆者は「統合管理されているデータを複数の部門や業務で共有し、部門ごとの業務に合った形でデータを提供するPLMシステムなんてものはコンセプトだけで、本当に実現している企業があるのか?」といった疑問をぶつけられたり、相談されたりしますが、筆者の知るだけでも表2のような事例があります。
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ここに挙げた事例はどれも筆者の会社が提供するPLMシステムで構築された事例です。
これらの事例では設計部品表の管理やCADデータおよび設計変更管理だけでなく、製造指示や治工具管理、組立プロセスの管理や配送管理など、製品のライフサイクルにかかわるさまざまな業務に対応できるような形でPLMシステムを導入していることが分かります。
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