PLMはTime to MarketからTime to Profit:先進企業が目指すグローバル成長期のPLM(1)(1/2 ページ)
日本にPLMを紹介する先駆けとなった書籍「CRM、SCMに続く新経営手法 PLM入門」(2003年刊)を執筆したアビーム コンサルティングの執筆チームが、その後のPLMを取り巻く環境変化と今後のあるべき姿について、最新事例に基づいた解説を行う。
Time to Market、Time to Volumeという掛け声の下に、PLMの導入が行われ始めてから久しい。われわれが「CRM、SCMに続く新経営手法 PLM入門」という書籍を上梓した2003年当時、不況時の低成長時代にあえいでいた製造業も、グローバル市場にその成長領域を見つけ、あらためて力を持ち直しつつある。このような事業環境の変化に伴い、PLMで実現しようとしていた領域も、これよりも一段高いステージでの導入に変わりつつある。
本稿は5回の連載記事を通して、グローバル成長期に勝ち抜くため、これまで以上に深い理解が必要となるPLMの考え方について整理することとする。
PLMの目指すものは変わっていない
そもそもPLMとは何かであるが、
顧客ニーズに合致した製品の市場への早期投入と、製品フェードアウトの遅滞ない意思決定を可能とさせるプロダクトライフサイクル全体を通じ、製品を軸とした統合マネジメントと企業内企業間コラボレーションの仕組み
とわれわれは定義する。
具体的には、商品を軸として、部門間、取引先間で情報システムを構築し、製品の企画設計から、製造、販売保守までの商品ライフサイクルを通じてのプロセス管理、商品に掛かったコストの管理とともに、商品にかかわる情報(商品の設計書、部品表データなど)を一元管理することである。基本的にこの考え方はこの数年変わっていない。
PLMを取り巻く環境の変化
一方で、製造業を取り巻く環境の変化は激しい。不況下の国内市場でモノが売れなかった時期、多くの企業は海外市場に活路を求めた。また、製品ライフサイクルの短命化に伴う対応として、よりコスト競争力の高い製品の提供として、ハイテク企業を中心に、より製造原価の低い地域の製造拠点へのシフトが進んだ。特に、日本企業は将来的な消費市場としての魅力も高い中国への製造シフトが進んだ。
この結果、これまで開発・設計拠点と製造拠点は比較的近い場所にあったものが、国境をまたいで分断され、開発・設計機能・製造機能・購買機能がそれぞれ遠隔連係を余儀なくされる事態となったところが多くなった。
Time to MarketからTime to Profitへ
初期のPLM導入動機は、Time to Marketであった。商品寿命の短命化が進む中、収益を継続的に維持・成長させるには、常に一歩進んだ新商品を開発し、市場に投入し続けることにしのぎを削る必要があった。
競合より一歩先に商品を市場に出せれば、その分だけ売上を確保できるし、商品価格もより高めに維持できる。また、これまでの半分の期間で商品開発ができれば、開発に要する資産も倍効率よく活用できる。PLMは開発速度の迅速化に貢献し、経営に新たな売上拡大施策、資産効率化施策を授け、企業価値向上に貢献できた。この一環として、3次元CADの導入や、デジタルモックアップなどを活用したシミュレーションテストの導入により、開発プロセスの短縮化の恩恵にあずかったところも多い。
さらに、期間の短縮化に伴う当該モデルの企画設計から量産化までの一連のプロセスを統合的にプロジェクト管理する必要性も発生し、PLM先進企業はこれをきっかけに新製品導入のステージゲートプロセス、デザインレビューのやり方や進ちょく管理の見直しに着手し、Time to Market改革を実現する企業も出てきた。
ここに来て、彼らにとっての次なる課題はTime to Profitである。
これは、商品ライフサイクルを通じて、製品軸としてのコスト実績の累計管理をするとともに、使用素材履歴、売価実績、計画系のデータをタイムリーに各情報システムや関連部門のヒアリングから需給担当者が吸い上げ、モデル別に計画的な利益管理をすることである。正確なモデル別コストをタイムリーに吸い上げ、コストを売り上げと比較し、モデル別採算性をチェックするのは、実行系のシステムとの連動が要求されるため簡単ではない。
しかも製造拠点の海外シフト、現地調達件数の増加などにより、製品を取り巻く新たな外部協力者の増大が、ますます多様な組織間のデータ連係難易度を高めている。
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