モバイルロボット導入期間を半分以下に、オムロンが統合ソフトウェア開発:無人搬送車
オムロンは2021年8月30日、シミュレーション機能により、モバイルロボットの短期導入や複数ロボットタイプの統合コントロールなどを可能とするソフトウェア「Flow core2.1」を同年9月1日からグローバルで提供開始すると発表した。
オムロンは2021年8月30日、シミュレーション機能により、モバイルロボットの短期導入や複数ロボットタイプの統合コントロールなどを可能とするソフトウェア「Flow core2.1」を同年9月1日からグローバルで提供開始すると発表した。
製造現場の効率化に向け自動化領域の拡大を目指す取り組みが広がりを見せているが、その一環としてAGV(無人搬送車)を活用した「搬送の自動化」に大きな注目が集まっている。ただ一方で、導入前の効果検証やライン設計が難しく、複数のロボットを統合管理する負担が高いといった課題を抱えていた。
オムロンが新たにリリースする「Flow core 2.1」は、これらの課題解決を目指したものだ。オムロンでは以前から搬送用ロボットと、その統合管理ソフトウェアとして「Flow core」を併せて展開してきたが、新バージョンではシミュレーション機能により、実際にモバイルロボットを設置する前に導入効率や課題を明確化し、短期での立ち上げを可能にしたことが特徴だ。
デジタル空間上で自律搬送ロボットのフリート(複数台のモバイルロボットを群れと見立てて制御する機能)のワークフローと走行量をシミュレーションする。これにより潜在的なボトルネックを特定し、導入期間を短縮させ、ワークフローの最適化をすることができる。「従来は導入前の段階で実際に試験を行い、さまざまな調整を行うことでようやく実稼働ができたが、導入までに半年くらいかかるケースもあった。シミュレーション機能などを活用することで半分以下に削減できるようになる」(オムロン)。
さらに、可搬重量の異なる複数タイプのモバイルロボットを統合的にコントロールすることができ、タイプ別にシステムを構築する煩雑さを解消する。オムロンでは、モデルタイプとしては3種類、可搬質量としては60kg、90kg、250kg、1.5トンという4種類のモバイルロボットを既に展開しているが、従来はモデル別に管理ソフトウェアを導入する必要があった。「Flow core 2.1」ではこれらを統合的に扱えるようにした。ただ「他社製の搬送車の管理などは行えない」(オムロン)。
導入後も容易に走行データの収集や可視化などを行える仕組みを採用した。ボトルネックの特定が容易になることから導入時に狙った効果とのギャップが見える化でき、走行効率の改善が可能となる。これにより、モバイルロボットの調整や検証期間の短縮に貢献する。これらにより「搬送ロボットを30〜40台使用するような工場を対象として導入を増やしていく。ライセンス販売として従来の2倍の販売量を目指す」としている。
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