ソニーの1Q決算はデジカメやテレビが好調、利益見通しも上方修正へ:製造マネジメントニュース
ソニーグループは2021年8月4日、2022年3月期(2021年度)第1四半期(4〜6月)の業績を発表した。“巣ごもり需要”関連でゲーム関連事業や音楽事業などが好調な他、2020年度はコロナ禍の影響を受けたエレクトロニクス分野が回復し、増収増益となった。
ソニーグループは2021年8月4日、2022年3月期(2021年度)第1四半期(4〜6月)の業績を発表した。“巣ごもり需要”関連でゲーム関連事業や音楽事業などが好調な他、2020年度はコロナ禍の影響を受けたエレクトロニクス分野が回復し、増収増益となった。
デジカメの回復などでエレクトロニクス事業が好調
2021年度第1四半期業績は、売上高が前年同期比15%増の2兆2568億円、営業利益が同26%増の2801億円、税引前利益が同5%増の2832億円、当期純利益が同9%増の2118億円という結果となった。オンライン会見を行ったソニーグループ 代表執行役 副社長兼CFOの十時裕樹氏は「経営のレベルが上がってきている。それぞれの事業で自律的に対処して長期的な成長が目指せる体制になってきている」と語った。
コロナ禍の影響を受けた前年同期から大きく改善が進んだのが、デジタルカメラやテレビ事業などを含むエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野(EP&S分野)で、前年同期に比べ大幅な増収増益を達成した。
テレビについては、主力製品である高付加価値・大画面商品市場が堅調で、高付加価値モデルへの販売シフトを進めたことで、売上高および営業利益に貢献したという。「平均販売価格は前年同期比38%増と大きく上昇した」(十時氏)。デジタルカメラについても、コロナ禍による市場縮小の影響が収まり、回復した需要を捉えて、高い商品競争力で全ての地域で好調な販売を続けたという。
十時氏はEP&S分野について「体質改善や構造改革を経て、経営体質は着実に強くなっている。需要の変化への対応は必要だが、収益貢献が継続できる事業体に変革できたと考えている」と手応えについて語っている。東南アジア圏への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)再拡大の影響からソニーでもマレーシア工場の稼働に影響が出ているが「これらの供給側リスクと、巣ごもり需要の落ち付きなどの需要面でのリスクを認識した上で通期業績見通しに織り込んだ形で運営する」(十時氏)としている。
ゲーム事業もPS5が順調、CMOSイメージセンサー事業も改善
ゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)は「PlayStation 5(PS5)」が好調で増収となったが、ソフトウェアの減収やPS4向けハードウェアの損益悪化などにより減益となっている。ソフトウェア・ネットワークサービスの売上高は、全世界で巣ごもり需要が大きかった前年同期比では15%低下したが、コロナ前である2019年度の同期間との比較では38%の増加となっている。また、PSユーザーの総ゲーム時間についても前年同期からは32%減少しているものの2019年度同時期との比較では18%増となっており「この2年間でゲーム市場の規模が大きく広がっている」と十時氏は述べている。今後に向けてはゲームスタジオの買収などさらにソフトウェア開発強化の取り組みを進める方針である。
PS5の第1四半期の販売台数は230万台で累計では1000万台の販売を突破した。十時氏は「PS5の2021年度の販売台数については『PS4導入翌年度の実績である1480万台を上回る』という目標に変更はなく、順調に販売ができている」と語る。また、半導体不足があらゆる製品分野で影響を及ぼしつつあるが「PS5については導入目標に見合う分のチップの確保を行っており、供給は心配していない」(十時氏)。
CMOSイメージセンサーなどのイメージング&センシング・ソリューション分野(I&SS分野)は、デジタルカメラ向けイメージセンサーの販売数量増加や為替の好影響を受け、増収増益となった。「スマートフォン端末向けのCMOSイメージセンサーについては、中国スマホ市場の停滞や在庫水準の調整などにより、中国メーカー向け出荷が5月以降鈍化したものの、需要状況を計画に織り込んでいたこともあり、売上高や利益は想定通りの形に制御できた」と十時氏は述べる。
また、これまで進めてきた顧客基盤の拡大について、中国メーカー各社による採用が進んでおり「2021年度における数量ベースでの市場シェア回復に向け順調に進んでいる」(十時氏)。2022年前半の各社フラグシップモデルへの高付加価値イメージセンサーのデザインインについても、順調に提案が進んでいるという。
これらの好業績を受け、通期業績見通しも利益項目については上方修正を行った。売上高は前回予想比と変わらず9兆7000億円としたが、営業利益は前回予想比500億円増の9800億円、税引前利益は同500億円増の9550億円、当期純利益は同400億円増の7000億円としている。
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