2D図面の“一義性”を考える【その1】図面の様式:3D CADとJIS製図(3)(2/2 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第3回は、3D CADから2D図面化する際に知っておきたいJIS製図の知識として、「図面の様式」を取り上げる。
1−2.尺度
用紙サイズとともに、図形の「尺度」は重要な事項です。筆者が手描きで図面を作製していた当時、あるいは2D CADで図面を描いていたころ、先輩社員からその“バランス”を指導されました。では、どのような図面が「バランスが良い」といえるのでしょうか。以下に筆者の考えを整理してみました。
- 正しく主投影図(正面)が選択されている
- 図形の向きが見やすい
- 用紙サイズと図形の大きさのつり合いがとれている
- 用紙の空白部分が少ない
- 寸法(サイズ)、公差、幾何公差、穴情報が見やすく描かれている
など
とにかく、用途に適した図形の尺度を使用することが重要です。JISでは推奨尺度が表記されています(以下、抜粋/編集)。
実物と同じ大きさで描く場合は「現尺」、実物を縮小して描く場合は「縮尺」、拡大して描く場合は「倍尺」を使用します。
3D CADでは、モニターの表示状態にもよりますが、実物スケールではない状態で表示していることがほとんどです。このモニターを通じてのスケール感は、3D CADによる設計上の課題でもあると筆者は考えます。
また、基本的に2D図面の作製時には現尺を使用することが多いのですが、大きな構造物の場合は縮尺を、小さな部品や拡大して細部の詳細を示す場合には倍尺を使用することで、分かりやすい図面を作ることができ、結果的に図面の一義性へとつながります。
1−3.図面の表題など
次に「図面の表題」です。各企業によって、使用される図面の様式はさまざまです。筆者も当たり前のように会社で用意された図面様式を使用していますが、JISには次のような図面様式に関する規定が載っています(以下、抜粋/編集)。
「JIS Z 8311:1998(ISO 5457:1980)製図−製図用紙のサイズおよび図面の様式(Technical drawings−Sizes and layout of drawing sheets)」
適用範囲:
この規格は、全ての工業分野の図面に使用する白紙、および印刷された製図用紙のサイズを規定する。この規格は、また、図面の様式について、次の事項を規定する。
- a)表題欄の位置および寸法
- b)輪郭および輪郭線
- c)中心マーク
- d)方向マーク
- e)比較目盛り
- f)図面の区域表示方式
- g)裁断マーク
一般に、この規格は、原図に適用するが、第1章の規定複写図にも適用する。
※備考:この規格の対応国際規格を、次に示す。ISO 5457:1980、Technical drawings−Sizes and layout of drawing sheets
JISには、製図に関するさまざまな説明が詳しく記されています。図面を初めて描くという人も、普段何気なく使用している人も一度じっくりと読んでみるとよいでしょう。
なお、3D CADから2D図面化する場合、「表題欄」に記載すべき事項は、設計者が3D CAD上であらかじめプロパティとして入力しておき、図枠テンプレートの設定によって2D図面側へ自動入力することが可能です。
「3D単独図」といわれる3Dによる図面化が行われる場合、表題欄にかかわる内容はどのように表示されるのでしょうか。3Dと2Dという違いはありますが、3D図面に記される設計意図は、2D図面と何ら変わりません。
次回は、JIS製図における2D図面の図形の表し方などについて解説します。お楽しみに! (次回へ続く)
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