食品製造業に求められる脱“属人化”、スマートマニュファクチャリング:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」(会期:2021年6月15日〜7月9日)において、野村総合研究所 上級コンサルタントの疋田時久氏が「食品・日雑製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進」をテーマに講演を行った。
カギを握るスマートマニュファクチャリングの構築
スマートマニュファクチャリングを実現するには、エンジニアリングチェーンにおける改革とサプライチェーンにおける改革が必要になる。
エンジニアリングチェーン管理(ECM)の改革についてNRIでは、開発手段の標準化とシステム化、開発および生産準備業務のデジタル化、製品企画段階での新製品目標QCD(品質、コスト、納期)管理の3つをポイントに置く。「多くの種類の商品において、短サイクルで市場に投入し、多様な消費者のニーズを満たすには、開発スケジュールを確実に管理しつつ、かつ複数の工程をコンカレントに進めていくことが必要となる。この同時進行で行われている工程を逐一管理する必要がある。何が確定情報で、今後の予定はどうなっており、変更の可能性があるのかなどについて、前後の工程を連携させながら進めていく必要がある」(疋田氏)。
これらを徹底するためためには、これまでのような属人的な開発プロセスの遂行と管理では不可能だ。食品系の開発工程はこれまでシステム化やデジタル化が導入しにくい領域とされてきたが、市場のニーズに即した商品開発と市場投入を実現するにはITの活用は避けて通ることはできなくなってきた。開発工程では、工程や部門ごとに個別最適化されていることが多く、これらの細部化されたシステム環境をシームレスに連携させ、情報の一元管理を実施し、プロセス管理を行う仕組みが必要になる。
こうした仕組みを構築した上で、サプライチェーン管理(SCM)システムとの連携を進めていかなければならない。サプライチェーン管理の課題は、ECビジネスの台頭、サブスクリプションサービスの提供などのパラダイムシフトによる市場環境の変化が巻き起こっていることだ。この中で、的確にサービス、商品を適切なタイミングで消費者に届けることが必要になっている。これまでは現場力といわれる最前線のスタッフにより属人的な対応により実行されてきた。今後は、現場だけの判断に任せるのではなく、各業務階層のレイヤーのそれぞれが将来シナリオを計画し、部門・階層横断でのタイムリーな状況把握による意思決定が重要となる。
これらの新たなエンジニアリングチェーンとサプライチェーンを緊密に連携させることでスマートマニュファクチャリングを実現する。具体的には「在庫の見える化」「業務プロセスの可視化」、そして「業務のスコア化」を進めていく。この中で「在庫の見える化」については、在庫がどれだけあるのかだけにとどまらず、その在庫がどのような業務条件、成約条件、ルール、判断基準から導かれているのかを明らかにしていく。「われわれの経験から考えても、過去からの慣習をちょっと変えるだけでも在庫が劇的に削減できる。こうしたことで単にシステムだけに頼らない、成約条件、業務ルールを変えることが重要だ」(疋田氏)。
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