食品製造業に求められる脱“属人化”、スマートマニュファクチャリング:サプライチェーン改革(1/2 ページ)
ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」(会期:2021年6月15日〜7月9日)において、野村総合研究所 上級コンサルタントの疋田時久氏が「食品・日雑製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進」をテーマに講演を行った。
ダッソー・システムズ主催のオンライン年次カンファレンス「3DEXPERIENCE CONFERENCE JAPAN 2021」(会期:2021年6月15日〜7月9日)において、野村総合研究所(NRI)上級コンサルタントの疋田時久氏が「食品・日雑製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進」をテーマに講演を行った。
需要の変動に柔軟に対応する食品製造業へ
品質に関する基準強化の動きや、食品ロスなどを含む環境問題への配慮、働き方改革など、食品製造業界に対するさまざまな要求は厳しさを増している。メーカーにとっては、市場での消費者ニーズの多様化や多ブランド化、SKU(Stock keeping Unit)数の増加などを背景に、少量多品種化が進み、需要動向を的確に読む必要が出てきている。
ただ一方で、食品製造業そのものの内情を見てみると、中小規模の企業体が多いため、投資力の問題から自動化が進んでいない工場も多く属人化が課題となっている。高い技術力を持つ従業員の高年齢化に伴う知見の引き継ぎも遅れている状況だ。同様に、部門をまたがる情報連携も進んでいない。そのため先述したような需要の多様化や変化のスピードの速さに応じた製造活動などを行えず、過剰在庫の保有や食品ロスの発生、顧客サービスのレベル低下などの損失が顕在化している。
疋田氏は「問題だと見ているのが、売り逃しロス(欠品など)、非効率な生産資源の活用、新規成長分野への展開機会の阻害など、将来的な潜在的な損失を生んでいる点だ。見過ごされがちだが負のスパイラルに陥っている」と指摘する。そして、これらの課題に対応するために「計画と実績の両情報を一元管理し、それを活用した経営システムの変革が必要となる」(疋田氏)としている。
現在、多くの食品製造業ではそれぞれの情報がバラバラで集積され、それを人手による情報のバケツリレーでやりとりしている状況で、リアルタイム性を持ち、タイムリーな判断を行うようなデータの使い方ができていない状況だ。「計画情報と実績情報、経営層や中間管理層、現場層の各層の情報が分断している。情報を誰がいつ把握し、どの程度先の意思決定をするのか、何について判断するのかをきちんと整理する必要がある。その上で情報の活用について定義していくことが大切だ」と疋田氏は課題について指摘する。
こうした事業環境の変化に対して俊敏に対応するために必要なのがDXである。食品製造業にとってDXを実現していくために必要な考え方として「スマートマニュファクチャリング(Smart Manufacturing)がカギとなる」と疋田氏は述べる。
NRIでは、「安心・安全を担保し、市場の変化に機敏に対応するに、デジタル技術を活用してデータを軸に『モノを企画、開発する力』と『モノを生産・供給する力』を強固に連携させる取り組み」を「スマートマニュファクチャリングの確立」だと位置付けている。
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