菓子の外観検査をAIで自動化、ロッテ狭山工場がYE DIGITALのサービス導入:スマートファクトリー
YE DIGITALはAI画像判定サービス「MMEye」をロッテの狭山工場が導入したと発表した。チョコレート菓子などの外観検査をAIで自動化し、スマート工場化を推進する狙い。
YE DIGITALは2020年4月24日、ロッテの狭山工場(埼玉県狭山市)が、製造業向けAI(人工知能)画像判定サービス「MMEye」を菓子の外観検査の用途で2019年12月に導入したと発表した。
ロッテは現在、スマート工場化の取り組みを全社的に進めているが、その上で菓子製品の外観検査工程の自動化がネックとなっている。例えば狭山工場ではチョコレート菓子の生産を行っているが、これらの菓子製品は組み立て加工型の工業製品に比べて生産当日の室温、湿度等の影響を受けやすく、仕上がりに個体差が出やすい。このため外観検査の合否判定をシステム化することは難しいとされており、人の目で確認して検査を行わざるを得なかった。しかし、それには数人の検査員を交代制で常に配置しなければならず人件費がかさむ上、そもそも合否判定の基準が作業者に依存するため検査の品質を平準化しづらいという問題があった。
これらの課題を克服するためロッテが注目したのがMMEyeだった。MMEyeはYE DIGITALのロボット開発や組み込みソフトウェア開発の経験を基に作成したAIアルゴリズム「Paradigm」を搭載した製造業向けのAI画像判定サービスである。菓子をはじめ個体差が生じやすい食品に対して高精度で外観検査が行える点が特徴だ。エッジ端末を活用して、生産ラインに設置したエリアカメラから取得した製品画像を分析することによって外観検査を高精度かつリアルタイムで実行可能。GUI(Graphical User Interface)からAIの最適化実行を簡単に行えるため、AIの専門知識がないユーザーでも簡単に操作、設定できる。
現在ロッテはMMEyeを、生産ライン上の菓子の欠けや割れといった不良品判定を自動化する目的で運用している。また今後は、MMEyeの運用を通じて得た生産ラインや時間帯ごとの不良品発生状況をデータとして蓄積、分析することで生産ラインの不良箇所を推定し、工程改善や食品ロス削減の施策実現にも効果を発揮すると期待を寄せているという。同社は今後も狭山工場でMMEyeの運用を続けるとともに、運用が定着した段階で他工場にも展開して、属人的な生産工程を自動化し、工場の稼働率と製品品質を向上させる計画だ。
今後の展開についてYE DIDITALは「MMEyeには判別基準が曖昧なものをルール化して高精度で判定できるという特徴と金属検出機では検知できない異物の混入を検知できるという特徴がある。こうした特徴を生かし、食品製造業をはじめとするプロセス製造業における効率化を引き続き支援していく」とコメントを出した。
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