“中間”領域の小型モビリティを創る、ヤマハ発動機のCO2削減戦略:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ヤマハ発動機は2021年7月19日、カーボンニュートラル実現に向けた同社のCO2削減の戦略と具体的な取り組みに関する説明会を開催した。同社は2050年までにスコープ1と2のCO2排出量を86%(2010年比)、スコープ3の排出量を90%削減する目標を掲げている。
新たな領域の小型モビリティを開発
こうした目標を達成するために、ヤマハ発動機は「1人当たりの移動に必要なCO2排出量を低減する」という基本方針を定めた。
具体的な戦略としては、モビリティの小型化はCO2排出量削減効果が期待できることから、四輪車と二輪車、二輪車と電動アシスト自転車のそれぞれの中間に位置する新たな小型モビリティの開発を進めている。例えば、四輪車と二輪車の中間領域に当たるモビリティとしては「MW-VISION」、二輪車と電動アシストの中間にあたる「TRITOWN」などを開発中だ。この他にも、1人乗りモビリティ「NeEMO(ニーモ)」などの開発と実証実験を行っている。
またモビリティの動力源開発も進める。通学通勤などの都市間交通に最適なEVバッテリーEVを搭載する「E01」(125cc相当)や、都市内交通に適した軽量なEVバッテリーEVを持つ「E02」(50cc相当)などの電動スクーター開発も進めている。
E01は約60分で電池の最大容量の90%まで充電できる、大容量かつ高出力のリチウムイオンバッテリーを搭載している。また、高剛性クレードルフレームワークの採用によって、バッテリーを車両中心部に配置して、バッテリーの高容量化とマス(重量)の集中化を同時に実現した。二輪車の特性に合わせて開発した、低速大トルクの高回転型空冷ブラシレスDCモーターも搭載しており、低速域での扱いやすさと全速域でのスムーズな加速感を実現する。
E02には軽量かつ高出力の着脱式バッテリー(48V)を採用している。またダイレクト駆動方式のインホイールモーターを採用することで、静かでスムーズな加速感を実現した。リアアームにパワーユニット部品を集約することで、コンパクト化も達成している。
この他にもヤマハ発動機は、既存の小型モビリティのパワートレインを環境負荷の小さなものに置き換える計画や、将来的に環境負荷の低い合成液体燃料が開発された場合に備えて、それらに対応できる新たな内燃機関の開発にも取り組んでいる。
また、これらの環境技術の開発加速を目指して、2022年までに、米国シリコンバレーで環境資源分野に特化した自社ファンド「Yamaha Motor Climate Scrum Fund(仮称)」の設立を目指しているという。運用総額は1億ドル(約109億円)、運用期間は15年間を想定する。
ヤマハ発動機 取締役上席執行役員 技術・研究本部長の丸山平二氏は「モビリティは元来、移動を便利にするだけでなく楽しさを与えてくれる、人間のパートナーでもある。当社は、カーボンニュートラルの実現を目指しながらより安全で楽しい製品、ソリューションを開発する営みを、ポジティブに捉えている」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 脱炭素に向けた日本の自動車政策はどう進む、「欧州に追従する必要はない」
国土交通省と経済産業省は2021年5月19日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第5回の会合を開き、業界団体などを対象としたヒアリングの結果をまとめた。 - カーボンニュートラルで石油やLPガスはどう変わる? 運輸業が電動化に望むことは
国土交通省と経済産業省は2021年3月26日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第2回の会合を開催した。同検討会は、2020年末に経済産業省が中心となって発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けた自動車分野での取り組みを検討するため、関係する業界からヒアリングを行っている。 - 決算発表シーズンがスタート、カーボンニュートラル戦略の表明も相次ぐ
おはようございます。土曜日ですね。1週間、お疲れさまでした。今週は、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月期)の決算発表がスタートしました。 - 自動車のカーボンニュートラルに向けた課題は? インフラ企業と自治体が訴え
国土交通省と経済産業省は2021年3月8日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第1回の会合を開催した。同検討会では、2020年末に経済産業省が中心となって発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けた、自動車分野での取り組みを検討する。 - ホンダが2021年シーズンでF1撤退、カーボンフリー技術への集中が背景に
ホンダは2020年10月2日、フォーミュラ・ワン世界選手権(F1)へのパワーユニットサプライヤーとしての参戦を2021年シーズンで終了すると発表した。ホンダは2015年からF1に参戦。Red Bull Racing(レッドブル・レーシング)やScuderia AlphaTauri(スクーデリア・アルファタウリ)とのパートナーシップの下、2019年シーズンは3勝、2020年シーズンも第10戦までに2勝を挙げるなど活躍してきた。 - カーボンニュートラルに向けた自動車政策
MONOistに掲載した主要な記事を、読みやすいPDF形式の電子ブックレットに再編集した「エンジニア電子ブックレット」。今回は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に向けて自動車政策を整理した検討会での議論をまとめた「カーボンニュートラルに向けた自動車政策」をお送りします。