カーボンニュートラルで石油やLPガスはどう変わる? 運輸業が電動化に望むことは:カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会(2)(1/2 ページ)
国土交通省と経済産業省は2021年3月26日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第2回の会合を開催した。同検討会は、2020年末に経済産業省が中心となって発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けた自動車分野での取り組みを検討するため、関係する業界からヒアリングを行っている。
国土交通省と経済産業省は2021年3月26日、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」の第2回の会合を開催した。同検討会は、2020年末に経済産業省が中心となって発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の実現に向けた自動車分野での取り組みを検討するため、関係する業界からヒアリングを行っている。
第1回は長野県と横浜市、電気自動車(EV)の充電インフラを整備するe-Mobility Power、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションを普及させる日本水素ステーションネットワークが出席した。第2回は運輸関連と、ガソリンやLPガスといった燃料に関わる業界団体の代表者が出席し、電動車の普及に向けた課題認識について説明した。
「地域のエネルギー供給拠点」が存続するには
出席した業界団体は、石油元売りの石油連盟、ガソリンスタンド運営事業者の全国石油業共済協同組合連合会、LPガスの小売り・卸売り事業者の全国LPガス協会、バス事業者の日本バス協会、軽商用車で運送を行う赤帽の事業者が参加する全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会、トラック運送事業者の全日本トラック協会、ハイヤーやタクシーの事業者が参加する全国ハイヤー・タクシー連合会の7団体だ。
商用車ユーザーである運輸事業者らは、電動化によるコストアップ、自社での点検整備の難しさ、商用車向けの水素ステーションや充電器などインフラの不足などの課題を指摘した。特にEVについては、業務でこれまでと同じような使い方ができるのか、従来の商用車並みの耐久性や耐用年数を確保できるのかという懸念が寄せられた。
燃料の小売り事業者の2団体は、EV偏重によってガソリンやLPガスの需要がさらに減少することや、スタンドの経営環境の悪化が加速する可能性に危機感を示した。石油製品の販売減少によって事業の休廃業を懸念していると回答するガソリンスタンド事業者は2割を超える。LPガスも、スタンドが右肩下がりで減少し続けている。これまで地域のエネルギー供給拠点として災害時に重要な役割を果たしてきたことを強調し、ライフラインとしての必要性を訴えた。
ガソリンスタンドは停電時も稼働するため、全国の約半分の拠点が自家発電機を備えている。災害時には自動車のガソリンや軽油だけでなく、暖房用の灯油の他、病院などの自家発電設備や電力会社の電源車向けの燃料も供給してきた。また、タンクローリーでの緊急配送や、高速道路で立ち往生した車両への燃料供給も行なった。LPガスも、都市ガスと比べた地域カバー率の高さや災害時の復旧の速さ、備蓄のしやすさに強みを持つ。
地域のエネルギー供給拠点として存続する上で、全国石油業共済協同組合連合会と全国LPガス協会は、従来の燃料供給設備だけでなくEVの充電ステーションやFCVの水素ステーションを併設することを検討している。しかし、EVやFCV向けのインフラを整備するコストの高さや、既存の充電ステーションや水素ステーションであっても収益性が低いことなどがハードルであると指摘。また、厳しい経営環境に置かれている現状では、将来に向けたこのような設備投資が難しいことにも言及した。
石油やLPガスの元売り事業者は、燃料の脱炭素化に取り組む中で、既存のサプライチェーンの転用にも配慮している。例えば石油連盟では、既存のタンカーやタンクなどを利用して水素を常温の液体で輸送できるようにする有機ハイドライド技術や、既存のガソリンスタンドでも扱えるCO2と水素の合成燃料の開発を進めている。再生可能エネルギーによって製造した水素や、カーボンリサイクルで再利用したCO2を使うことによってCO2排出を減らす。
元売りの日本LPガス協会は「グリーンLPガスの生産技術開発に向けた研究会」を設立し、CO2と水素による人工合成プロパンや、植物系廃棄物や家畜の排泄物によって生成するバイオLPガスの生産技術の確立に取り組んでいる。小売り事業者の団体である全国LPガス協会も同研究会に参画するなど、LPガスのカーボンニュートラル化を模索している。
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